内海長者
今から300年ほどむかしのこと、伊達吉村っちゅう立派なお殿様の子供のころのはなしでなぁ。 むかしなぁ、伊達の若様が松島の天童庵ちゅうとこで立派な跡取りさなるために勉強をしていたんだと。来る日も来る日も勉強をしていたんだども、そのうち飽きてきてなぁ、家来に内緒で近くさあった小船で舟遊びを始めたんだと。 海岸の近くで舟遊びをしたいたんだども、急に風が吹き出して若様の乗った舟がどんどん沖さ流されていったんだと。若様はあまりの風の強さに舟にしがみつくのがやっとのことでなぁ、今にも舟がひっくりかえりそうだったんだと。 舟が浦戸さある野々島の近くまで流されるとなぁ、島のもんが子供一人だけ乗っている舟を見つけたんだと。んだどもどうすればいいかわかんねぇもんだから、ただおろおろしながら無事を祈るしかなかったんだと。そのうち舟は島の内海長者の家の前さある平根に乗り上げたんだと。これで島のもんもやっと助けることができると小舟さ近づいたんだと。そしたら子供の着ている着物の紋が伊達家の「竹にすずめ」だったんだからさぁ大変。大騒ぎになってしまってなぁ、さっそく内海長者さ 知らせたんだと。 長者は若様にそそうがあってはなんねぇってんで、倉から米俵をだしてはそれを海の中さ次々と投げ入れて投げ入れて、ついには平根と陸をつなぐ橋ができたんだと。んだども若様は俵ではなく自分から海ん中入ってやっとのことで陸さ戻ったんだと。若様が島さある観音堂にお参りし無事を報告した後に内海長者の家で休んだんだと。 あくる日さなって、家臣たちが若様を迎えにきて無事に松島さ戻ることができたんだと。 その若様が成長して立派なお殿様になったんだと。んだどもそのときに内海長者の屋敷さ役人が大勢来て家やら財産やらをみーんな取り上げてしまったんだと。 まんが日本昔ばなしの本をお探しの方はこちら ![]() |
膳の湯
むかしなぁ、歌津の地ではまいにちまいにち日が照るもんだから作物がいっこうに育たなねかったんだと。稲やらなにやらみぃんな雨がふらねぇもんだから枯れはててしまったんだども、蕎麦だけはすくすくと育ってなぁ、村のもんが蕎麦を食って飢えをしのいでいたんだと。 ある日のこと、村さ一人の旅のもんがやってきたんだと。旅のもんは今払川のほとりを歩いていたんだと。そしたら急に腹の虫がなきはじめてな、まわりには店のようなものはどこにも見あたらねかったもんだから仕方なしに近くの家へいってな 「ごめんくだせぇ。おら、旅をしてここまでやってきたんだども朝からなぁんにも食っていねぇもんでな、なんか食わせてけねぇべか」 って言ったんだと。そしたら家の主人が 「それはそれはなんぎであったことでしょう。今年は飢饉でなにも食べるものがありませんが、蕎麦でよろしければどうぞおめしあがりください」 ってなぁ、旅のもんさそばがきを振舞ったんだと。旅のもんはそばがきをおいしそうに食べ水をごくりと飲みほしたんだと。そこさそば湯もだされたんだども旅のもんは腹いっぱいになってなぁ、そば湯をのまねぇでご主人さお礼を言ってまた元気に歩き出したんだと。 坂之貝峠を越えて入谷さ降りてなぁ、沼のほとりを歩いていたところさ一人の男がおってなぁ 「もし、そこの旅のお方、旅のお方。おめぇさんどっから来た」 って呼び止めたんだと。そしたら 「おらぁ、今払川の家さ蕎麦ご馳走になったところだ」 って答えたんだと。それを聞いた男は 「おめぇ、蕎麦食って水飲んだか?お湯飲んだか?」 って聞くとなぁ、旅のもんは 「おら、水だけ飲んだ。お湯っこは飲んでねぇ」 って答えたとたん、男が刀を振りかざして旅のもんのわき腹さぐさりと刺したんだと。そして男は旅のもんの腹を切り裂いて中さあったそばがきを沼の水で洗っておいしそうに食べたんだと。このことを知った村のもんが哀れに思い沼のほとりさ旅のもんの墓を作ったんだと。 蕎麦を食った後に水を飲むとそばが固まってしまうもんだから、そば湯を膳の湯として飲めばいいんだとさ。 まんが日本昔ばなしの本をお探しの方はこちら ![]() |
きつねの恩返し
むかしなぁ、あるばくち打ちがいたんだと。今日も少しの小金を稼いで家さ向かっっていたんだと。すると道の真ん中で童たちがこぎつねを取り囲んでいじめていたんだと。ばくち打ちは通り過ぎようとしたんだどもなんだかかわいそうに思えてきてなぁ、 「こら、これやっからきつねをはなしてやれ」 って童たちさ小金やってきつねを放してやったんだと。 「おめぇの命はオラが買ったから、早く山さ戻れ」 って言うとこぎつねは後ろをふりかえってばくち打ちをみっと、そのまま山さ戻ったんだと。 その日の夕方のこと、ばくち打ちの家の戸をトントンたたくもんがいたんでばくち打ちのかかあが戸をあけたんだと。そこには若ぇ娘さんがいてなぁ、 「ご主人様さ用事がございます。ぜひあわせてください」 っていうんだと。かかあは若え娘がたずねてきたもんだから面白くなくてなぁ、ばくち打ちを蹴っ飛ばして起こしたんだと。ばくち打ちは心当たりがねえもんだけど 外さでたんだと。そしたら娘さんは 「私と一緒にきてください」 って歩き出したんだと。ばくち打ちは何がなんだかわかんねぇんだども娘さんのあとをついていくとなぁ、そこにはみたこともねぇ立派な家についたんだと。中さ入っと娘さんの両親が出てきてなぁ、 「あなた様は私の子供を助けていただきました。命の恩人です。今日はゆっくりしていってください」 っていうと目の前さ次々と酒や肴がだされてなぁ、男は腹さたらふく詰め込んだんだと。そして夜もふけてきたもんだからそのままきつねの家さ泊まることにしたんだと。 その晩のこと、いい気持ちで寝ていたばくち打ちをきつねが起こすんだと。なんだべっておきてみるとなぁ、 「いま竹駒さまのお家督が急病になったとの知らせがあってすぐに出かけなければならない。すまないが留守番をしてください。ただ、夜中さなっと裏座敷さ七福神がやってきて宴会をするがそれは絶対にのぞいてはいけませんよ」 っていうと出かけてしまったんだと。ばくち打ちは言われたとおりに留守番をしていっとなぁ、夜もふけてきたころ裏のほうから飲めや歌えやのどんちゃん騒ぎがきこえてきたんだと。最初はみちゃなんねぇってんで黙っていたんだども、その様子があまりにも楽しそうでなぁ、きつねから言われたことを忘れてみてしまったんだと。そしたらそこには弁天様やら大黒様やらが飲んで歌ってわいわい騒いでいたんだと。やがて七福神たちもお開きになったもんでばくち打ちも床さ戻って寝たんだと。 翌朝になってきつねが帰ってくるとなぁ 「あれほど見てはいけないと言ったのに見てしまったのですね。あなたの顔がきつねの顔になっていますよ」 って言うんだと。ばくち打ちは慌てて鏡をみっとなぁ、そこには口のとがったきつねの顔がうつっていたんだと。男が青ざめているとなぁ 「こうなっては家に帰ることもできないから、竹駒さまのお家督様が昨夜なくなられたから、あなたが跡をついでください」 っていわれてなぁ、ばくち打ちもしかたねぇもんで家督になることにしたんだと。 それならばときつねは男さ化けると街さ言って反物やらたんすやらを婿入り道具として買ったんだと。そしてたんすやら長持をかついで婿行列を作って歩いていたんだと。そしたら家が見えてきてなぁ、もう二度と家さ戻れないと思うとなぁ 「いまからかかあさ話して別れをいうからしばらくまっててくれ」 っていうと家の中さはいっていったんだと。そしてかかあになぁ 「おれはこれこれこういうわけできつねになってしまった。おめぇには苦労をかけるが子供を立派に育ててくれ」 っていったんだと。そしたらかかあは 「なに寝ぼけたこといってんだ、面みてみろ」 ってなぁ。ばくち打ちは自分の顔をよーくみっときつねさ変わっていなくてなぁ。 慌てて外にでてみると外には行列がなくなってなぁ、変わりにたんすやら長持やらがおいてあったんだと。こりゃあきつねが恩返ししたに違いねぇってなぁ。 まんが日本昔ばなしの本をお探しの方はこちら ![]() |
甚五郎とあまのじゃく
宮城県の角田市の高倉ちゅうとこさ国宝にもなってる阿弥陀堂があってなぁ、そりゃあ国宝になるんだから立派なもんだども屋根の木がなんかおかしくてなぁ。それにゃあこんな話が残っているんだと。 むかしなぁ、飛騨の名工である甚五郎が高倉さやってきたんだと。何でも弘法大師様が高倉さ阿弥陀堂を建ててほしいって甚五郎さ頼んでなぁ、甚五郎も弘法大師様じきじきからお願えされたもんでなぁ、三日三晩で完成させるって約束したんだと。 ただでさえ日本一の名工である甚五郎に弘法大師様の霊験がくわわるもんでなぁ、甚五郎が斧ふるえば、木から出た木屑が人となり阿弥陀堂の建設を始めてなぁ、それはそれはやすまねぇでせっせと働き続けたんだと。 あっという間に三日たってなぁ、今晩の一番鳥が鳴くまでに完成させなければなんねぇってことでその日はいつもにもましてつくり続けてあと少しでできあがろうとしていたんだと。 「今は四つ半(23時)んだから九つ(0時)あと少しだべ」 って甚五郎は思ってなぁ、いまから仕上げに入ろうとしたら突然 コケコッコー って一番鳥が鳴く声が聞こえてなぁ、あわてた甚五郎は四方の垂木を短く切ってしまって完成させたんだと。んなもんだからその後に何度修繕しても垂木だけは短くしかできなくなったんだと。 他にもこんな話があってなぁ、同じく弘法大師様がどこかに寺建てるいい場所はねぇかって色んなとこを捜し求めていたんだと。そしたら角田さある堂平山さ霊場をひらくことにしたんだと。まず手始めに堂平山とその向かいさある斗蔵山さ橋をかけることにしてなぁ、飛騨の工(たくみ)を呼び寄せたんだと。 飛騨の工は三日三晩で橋を完成させることを約束するとなぁ、さっそく人夫を呼び寄せては仕事をはじめたんだと。なにしろ日本一の名工である飛騨の工なもんだから工事もどんどんすすんでなぁ、あっという間に三日目の晩さなったんだと。橋も九分まですすんでいてなぁ、まだ時間もあるし大丈夫だろうって思ったんだと。そしたら コケコッコー って一番鳥が鳴いてしまったんだと。飛騨の工も慌ててしまったんだどもどうしようもなくてなぁ、弘法大師様さ頭下げてあやまってとぼとぼと飛騨さ帰っていったんだと。んだども実はあまのじゃくが一番鳥のまねをして出していてなぁ、このことを知った弘法大師様は 「こんな所には寺を開くことはできない」 ってなぁ、高野山さ寺を開くことにしたんだと。 まんが日本昔ばなしの本をお探しの方はこちら ![]() |
黒羽織ムジナ
むかしなぁ、猿子山の近く一本杉ちゅうとこさ黒い羽織を着たムジナが住んでいたんだと。このムジナぁあきんどをみるやいなや化かして魚を持ってったり、法事の折り詰めをみるやないなやまたまた化かしてかすめとったりしていたんでな、村のもんは困っていたんだと。 なんとかして黒羽織ムジナを退治しなけりゃなんねぇって話になったんだども、みんな仕返しが怖ぇもんだから下をうつむいていたんだと。そんな様子を見ていた村で無鉄砲の矢太郎が 「なんだなんだ、臆病もんが。おらがひっつかまえてくるべさ」 ってな、一人猿子山さでかけていったんだと。矢太郎が猿子山さやってくっと、もうあたりは真っ暗でなぁ、風もふかねぇもんだから物音一つしねぇで気味が悪ぃかったんだと。 矢太郎が歩いていっとな、急に後ろの方からドスンドスンって足音が聞 こえたんだと。矢太郎はおっかねぇのを我慢して振り返ってみたんだと。 「こりゃあ矢太郎じゃねでか。おれが黒羽織だ」 って割れ鐘のようにぐわんぐわんとでっけえ声が聞こえてなぁ、その声で山がぐらぐら揺れたほどなんだと。その姿は身の丈が七、八尺もあってなぁ、体から針金みてえな気がはえて目は火で燃えているように赤く光っていたんだと。 さすがの矢太郎も肝つぶしてしまってなぁ、動けなぇでいたんだと。そしたら矢太郎の頭の上さ黒い塊が飛んだかと思うと石やら砂やらが雨のようにばらばら降ってきたんだと。矢太郎はほうほうのていで村さ帰ったんだと。 矢太郎は黒羽織にやられたのがくやしくてくやしくてしかたねくてな、村の年寄りさ退治の仕方を聞いたんだども誰もやめろとしかいわねかったんだと。んだども、ある年寄りのじんつぁんはなぁ 「黒羽織の隙狙って股ぐらつかみゃあいいべ」 って教えたんだと。 早速矢太郎はその晩さ山に出かけていったんだと。しばらく歩いていっとなぁ、今度はドドドドドドーって音がしたかと思うと熊手みてぇなでっけえ手が伸びてきて矢太郎をわしづかみにして木の上まで持ち上げたんだと。弥太郎が驚くと同時に今度は地面さ叩きつけられてなぁ、また黒い塊がふってきたんだと。矢太郎はとっさに見えた黒羽織のしっぽをむんずとつかんではそのまま放り投げたんだと。 そしたら杉の木さぶつかってギャーって叫び声が聞こえっとそこさのびてしまったムジナがいたんだと。矢太郎はムジナさ縄かけていざ帰ろうとすっとムジナが泣きながら 「許してけろ、どうせ殺されんならあなた様さ源平の戦をごらんにいれっから」 って言ったんだと。矢太郎はそれならばとムジナの縄をほどくとなぁ、急にあたりが明るくなったかとおもうと紅白の旗が入り乱れてなぁあたりは一面の海になってたんだと。そんでどこからともなく琵琶の音色が聞こえてきては琵琶法師が語りはじめたんだと。そしたら今度は屋島から壇ノ浦に変わってなぁ、目の前さ義経があらわれたんだと。 「これぞ義経の八艘とびなるぞ」 って大声が聞こえると矢太郎は我にかえってあたりを見回したんだと。そしたらあたり一面真っ暗になって黒羽織ムジナがばたばたと逃げていったんだと。 矢太郎は黒羽織ムジナを捕まえることはできなかったんだども、ムジナもそれからというもの悪さをしなくなったんだと。 まんが日本昔ばなしの本をお探しの方はこちら ![]() |
地獄めぐり
むかしなぁ、今の宮城県黒川さ一軒のお寺があったんだと。お寺さ坊様と小坊主と二人が住んでいたんだと。その寺の隣さそれはそれはでっけぇ屋敷があってな、そこには偏屈な長者どんが住んでいたんだと。坊様と長者どんはとなりどうしなもんだから長者どんがお寺さいっては茶を飲んだりしたんだと。 ある日のこと、いつものように長者どんがお寺さいって坊様と茶を飲んで話していたんだと。 「長者どん、長者どん、おめえさんそんな欲張りでいたら地獄に落ちることさなっつお。心あらためなせぇ」 って言うんだと。そしたら長者どんの偏屈がはじまってなぁ 「そんなら地獄ってどんなところだ」 って聞くんだと。坊様は 「地獄というのはな、罪人が永遠の苦しみを受けるところでな」 って話し始めようとしたんだと。そしたら長者どん 「坊様は地獄をみたことあんのか?ねえんならいくら言われても信用できねえべ。坊様、地獄を見てきてくれねえか」 っていうんだと。これには坊様おどろいてしまったんだども、いまさら後にひけねぇもんでなぁ、しかたねえんで寺の裏さ穴掘ってそこさでっかい樽をいれっとそこさ坊様をいれてふたして上から土かぶせて生き埋めにしたんだと。 それからというものお寺の裏からは坊様が土の中からちりーん、ちりーんって鈴を鳴らし続けたんだと。坊様が土さ埋まって二十日たつとなぁ、隣の長者どんの家が騒がしくなったんだと。小坊主が、どうしたんだべ、って長者どんの屋敷さいってみっと長者どんの馬がぐったりしていてなぁ、中さ入っと長者どんやら奥さんやら子供やらがみんな熱出してうんうんうなって苦しんでなぁ、長者どんの家族みんな息をひきとってしまったんだと。 小坊主は慌てて寺の裏さいって坊様をよんでみたんだと。そしたら土の中から坊様の声がしてなぁ 「わしが一足先に地獄を見てなぁ、準備ができたんで長者どんを呼ぶことにしたんだ。ではわしも地獄さ戻る。たっしゃでな・・・」 まんが日本昔ばなしの本をお探しの方はこちら ![]() |
地獄から極楽さいったはなし
むかしはなぁ、三度のメシより酒が好きで好きでたまんねぇ男がいたんだと。んだから一日中はたらかねぇで飲んでばかりいたもんでなぁ、家のもんはどうにかして懲らしめることができねぇかと考えていたんだと。 ある晩のこと、男は酒を飲んでぐうすかぐうすかいびきをかいて寝てしまったんだと。これさいわいにと家のもんは男の衣服をはぎとって変わりに白装束をきさせてなぁ、頭さひたいつきをまいて棺桶の中さいれたんだと。そしてふたをしめっと、外さはこんで畑ん中さ放りなげたんだと。 真夜中さなって男が目を覚ますとな、なんだか天井がちけぇように感じたんだと。おかしいと思って額さ手をやるとなぁ、そこにはひたいつきがついていたもんでびっくりしたんだと。よくよくあたりを見回すとそこが棺桶の中だって気がついて、服が白装束だったもんだから自分が死んでしまったもんだと思ったんだと。 しかたねぇんで棺桶のふたをあけて外さでてみたんだと。あたりは真っ暗な闇につつまれていたもんでなぁ、ともかく極楽か地獄かわかんねぇけどもあるくことにしたんだと。 堀切街道を歩いてたまのき街道に入り込んでどんどん西さいくとなぁ、トン、テン、カン、トン、テン、カンって朝から鍛冶屋が刀を打っていたんだと。男には燃え盛る炎と刀を鍛えたたいているときに出ている火花から鍛冶屋が鬼に見えて震え上がったんだと。んだども、しかたねぇんで 「鬼さん鬼さん、ちょっくらおしえてけさい」 って言ったんだと。そしたら鍛冶屋は 「鬼だと?なにばかなこといってる」 って鍛えるのに使っていた鉄棒をふりあげて男に怒鳴りつけたんだと。男は肝をつぶしてなぁ、一目散に逃げたんだと。 「あぁ、鬼がいたということはここは地獄だべな。んだども引き返すわけにもいかねぇなぁ」 ってんでそのまま男は覚悟を決めて歩き続けたんだと。そしたら朝から作業している粉屋のばあさまがいたんだと。男にはそれが三途の川さいる鬼婆に見えてなぁ、んだどもしかたねぇもんで 「ばさま、ばさま、極楽はどこだべ」 って聞いたんだと。そしたらばあさまは 「極楽ならばこの先だ」 って指差したんだと。ばあさまはてっきり男が古川の極楽寺さ行くと思ってなぁ。 男はそうともしらずにばあさまの指差す方向さ歩き続けたんだと。そしたら極楽寺の山門についてなぁ、 「ここが極楽のいりぐちにちげぇねえ」 ってんで極楽寺の山門をくぐったんだと。んだどもまだ夜があけてねぇもんだからうっかり足を滑らせて寺の池さザブーンって落ちてしまったんだと。男は地獄の血の池地獄さ落ちてしまったと思ってなぁ、池のそこさ足がついているのにまったく気がつかねえで 「神様仏様観音様!うかばせたまえ!うかばせたまえ!南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏」 って念仏を唱え続けたんだと。 まんが日本昔ばなしの本をお探しの方はこちら ![]() |




