於国子稲荷
むかしなぁ、三戸の六日町さ於国子(おくにこ)っちゅう年のころは二十歳で、それはそれはたいそうめんこい娘さんがおったんだと。この於国子はたいそう本を読むのが好きなもんでなぁ、朝起きてから夜がふけるまで周りに積みあげられた本をとにかく読み漁っていたんだと。んなもんだから町の人もあきれはててなぁ、 「いったい於国子は朝から晩まで本読んで何になるつもりだぁ」 ってからかっていたんだと。 ある日のこと、六日町で火事が起きてなぁ、風も強かったもんで瞬く間に燃え広がってしまったんだと。町の人は、さぁたいへんと火事から逃げ回っていたんだと。 そん時にでも於国子はまったく気にしねぇでいつもの用に本を読み漁っていたんだと。 火の勢いは衰えることを知らず、とうとう於国子の家に燃え移ったんだと。そしたら不思議なことに於国子の家の屋根から真っ黒い煙が出たかと思うと、そのまま天高く登っていってなぁ、その煙が雲になってたちまち大雨がざーざーざーざー降りはじめたんだと。雨のおかげで町中に燃え広がった火事も下火になったんだと。 んだども於国子は家とともに姿を消してしまってなぁ。 「於国子が稲荷様になって火事を食い止めたに違いねぇ」 って噂しあってなぁ、町ののみんなで祠を建てて於国子をまつったんだと。それからというもの、この祠を於国子稲荷といってなぁ、今でも大事にされているんだと。 まんが日本昔ばなしの本をお探しの方はこちら ![]() |
名刀三日月丸
むかしなぁ、野辺地の有戸っちゅう村さ助三郎という若者が住んでいたんだと。助三郎は朝から晩まで畑仕事に精をだしては日々をすごしていたんだと。ところで、この有戸の村の近くさある山ん中さ大きな石があってなぁ。不思議なことに三日月の晩になると石から うおーん うおーん ってうなり声が聞こえるんだと。村のもんは化け物がいるに違いねえって思ってなぁ、三日月の夜さなっと戸をぴしゃりとしめて早々と寝てしまうんだと。んだども助三郎にゃあ誰かが呼んでいるように聞こえてならねぇもんでなぁ、次の三日月の晩の時さうなり声のする石さむかったんだと。助三郎が近づくにつれてだんだんうなり声が高くなってなぁ、ついに石さたどり着いたんだと。なんだか助三郎には泣き声に聞こえてきてなぁ、 「おらでよければ話をきいてやっから」 って石さ向かって言うとなぁ、うなり声はぴたりとやんで目の前さ鎧兜姿の落人がすぅっとあらわれたんだと。 「わしは源平の合戦で破れ落ち延びたんだがここで力尽きてしまった。どうか供養をしてくだされ」 っていうやいなや姿がすぅっと消えてぼろぼろになった鎧兜があったんたんだと。 助三郎は鎧兜を手にすると家さ持ち帰って庭さ埋めてねんごろに弔ったんだと。その晩のこと、助三郎の夢枕さあの落人があらわれてなぁ 「供養をしてくださりかたじけない。明日の夜に外にでてみるといい」 っていうもんでな。次の晩、三日月の輝く夜に外にでたんだと。ぼんやり三日月を眺めているとなぁ、急にあたりがぱぁーっと明るくなり天から光り輝くものが落ちてきて家のかやぶきやねさ刺さったんだと。助三郎が屋根さ上ってみっとなぁ、そこには光り輝く太刀がささっていたんだと。 「これがわしの太刀じゃ。そちの守り神にせい」 と声がしてなぁ、助三郎はこの太刀を三日月丸と名づけて家宝にしていたんだと。 ある日のこと、助三郎の家さ山伏がやってきたんだと。この山伏は何も修行しねぇもんでなぁ、助三郎の家さある三日月丸を盗むつもりでやってきたんだと。皆が寝静まったころを見計らうと山伏は三日月丸を背中にしょって家を飛び出したんだと。 山伏が夜通し走り続けて夜も明けようとするころになぁ、その足を止めてどんな名刀なのか気になって太刀を背中からおろしたんだと。 そしたら太刀が勝手にさやから抜けると山伏さ向かって斬りつけてきたんだと、山伏は驚いて逃げ出すとなぁ、いつまでもいつまでも太刀は山伏を追いかけて、とうとう山伏は助三郎の家まで戻ってしまったんだと。そしたら家の前には助三郎が立っていてなぁ 「おらの夢枕さ太刀は盗まれたが戻ってくるから安心しろっちゅうお告げがあってなぁ、本当にそのとおりになった」 っていうんだと。山伏は助三郎にわびるとそれからは心を入れ替えて修行をし、立派な山伏になったんだと。 いまでもこの三日月丸は宝刀として大事にされているんだと。 まんが日本昔ばなしの本をお探しの方はこちら ![]() |
源八ヒノキ
むかしなぁ、青森県の下北といえば南部様の領土でな。そこでとれるヒバは「南部ヒノキ」としていろんなとこから注文が絶えなかったんだと。そんな下北さある牛滝村っちゅうとこさ坂井源八ちゅうもんがいたんだと。源八は南部のお殿様から山の管理を任されていてな、他の木がはえてきたらそれを引っこ抜いたり、木を盗むもんがいねえか毎日見まわりに行ったり、どの南部ヒノキから切っていけばいいかなどを決めていたんだと。 ある日のこと、源八が信心していた本誓寺が火事で焼けてしまったんだと。源八は何とかしてお寺を新築しようと方々駆け回ったんだども寺を建てるだけの金を集められずにいたんだと。 そんなときになぁ、富山は氷見さある光禅寺っちゅうとこさいる月澗(げっかん)ちゅう和尚さんがやってきたんだと。月澗和尚は源八と顔なじみでなぁ、源八の家さ挨拶にやってきたんだと。源八は久しぶりの月澗和尚なものでそれはそれは手厚くもてなしたんだと。そん時になぁ、寺が焼けてしまったけども立て直す金がないことをぽろりとこぼしたんだと。それをきいた月澗和尚は自分の荷物から袋を源八にさしだしたんだと。 「わしも、寺が古くなったので新しく立て直そうと寄付をつのっていたところじゃ。こうして寺を直すぐらいの金は集まりましたが。これはあなたがお使いください」 っていうんだと。源八は驚いてお金を返そうとするとなぁ 「いやいや、私の寺は古いが屋根も柱もある。だが、お前さんのところでは何もないではないか。さぁさぁ、うけとりなされ」 っていうんだと。源八は月澗和尚の申し出をありがたく受け、そのお金で立派な寺を作ったんだと。この話を聞いた南部のお殿様がなぁ、立派な心がけであるというんで月澗和尚さ南部ヒノキを送って寺の再築をするように命じたんだと。これを聞いた源八は恩返しができるってよろこんでなぁ。村のもんも喜んで立派な南部ヒノキを切り出したんだと。それを船さつんで氷見さ送ったんだと。 何日かすっとなぁ、船が牛滝さ戻ってきたんだと。そしたら船頭がなぁ 「氷見にあと少しっちゅうところで嵐にあって船が転覆してなぁ、んだどもみな無事でなぁ、ヒノキも氷見の浜さぜんぶ打ち上げられてなぁ。ほんにありがたい、ありがたい」 ってことがあったんだと。この南部ヒノキのおかげで光禅寺は立派に完成したんだとさ。 まんが日本昔ばなしの本をお探しの方はこちら ![]() |
スネコタンポコ
むかしなぁ、南部のある村さじい様とばあ様がすんでいたんだと。二人にゃあ子供がいねえもんでなぁ、まいにちまいにち寂しく暮らしていたんだと。そこで二人そろって村の鎮守様さ行ってなぁ 「どうかオラたちさ子供を授けてくだせぇ」 ってまいにちまいにち願をかけていたんだと。そしたら願をかけていくうちにばあ様のすねさ小さいコブができたんだと。最初は何も気にしねかったんだども、日に日に大きくなってなぁ、そしたらコブがパカっとわれてなぁ、中から小さな小さな指ぐらいの子供が生まれてきたんだと。二人はたいそうよろこんでなぁ、すねから生まれたんでスネコタンポコって名前つけて二人でかわいがって育てたんだと。 ある日のこと、スネコタンポコがじい様とばあ様さ 「おらぁ、今から嫁っこ探しにいくだ。んだから馬っことコウセン(麦の粉)用意してけろ」 っていうんだと。じい様とばあ様は馬とコウセンを用意すっとなぁ、スネコタンポコは馬の耳ん中さ入って旅に出かけたんだと。 何日かたつとなぁ、見たこともねえ大きなお屋敷が見えたんだと。スネコタンポコは屋敷の前さ馬を止めっと 「ごめんくだせぇ、ごめんくだせぇ」 って屋敷へ向かって呼びかけたんだと。そしたら中から長者どんがでてきたんだども、声はするのに目の前には馬しかみえねかったんだと。 「長者どん、下だ下だ」 って声がするとなぁ、ようやくスネコタンポコに気がついたんだと。スネコタンポコが宿を頼むとなぁ、長者どんもこんな変わった人見たことねぇ、ってんで心よくスネコタンポコを泊めたんだと。その晩のこと、スネコタンポコは皆が寝ているのを確認すっと、長者どんの娘の部屋さこそっとはいてなぁ、娘の口の周りさコウセンをつけて、そのまま自分の床さ戻ったんだと。 夜があけっとなぁ、スネコタンポコがおいおいおいおい泣いているもんでなぁ、長者どんがなんで泣いているかを聞いたんだと。そしたら 「朝起きてみっと食料のコウセンがなくなってんだ。コウセンのこぼれたあとたどってみっと長者どんの娘さんの部屋さいってんです」 っていうんだと。長者どんが娘っこの部屋さ行ってみっと、娘っこの口のまわりさコウセンがついているもんでなぁ、長者どんはカァーっとなってしまい 「人のものをとるように育てた覚えはねぇ。とっとと出て行け!」 って娘っこを家から追い出したんだと。 門の外さスネコタンポコの馬がいてなぁ、耳からスネコタンポコが出てきて空中で回転すっとなぁ、あんなに小さかったスネコタンポコがたくましい青年さ変身したんだと。 「長者どん、おらぁあんたの娘さんを嫁っこさもらうべ」 っていって、娘っこを馬にのせてじい様とばあ様のところさ帰っていったんだと。 それからというもの、二人は一生懸命働いて四人で幸せに暮らしたんだと。 まんが日本昔ばなしの本をお探しの方はこちら ![]() |
若水汲み
むかしなぁ、牛潟村ちゅうとこさ一人の男が住んでいたんだと。男にはみよりもだぁれもいねぇひとりぼっちなもんでなぁ、海さでて漁をしてはほそぼそとくらしていたんだと。 ある年のおおみそかのこと、明日は正月ってなもんで男が正月のしたくするために財布を見たんだと。んだどもたぁったの十文しかはいっていねぇもんでなぁ、んでもそれでも何か買ってこようと町さでかけていったんだと。栗山村を過ぎたあたりでなぁ、わらしっ子たちが道の真ん中でわいわい騒いでいたんだと。なんだべなぁってんで男がひょいと覗くと、そこには子狐がいてなぁ、わたしたちに棒で殴られたりしていじめられていたんだと。それを見ていた男はかわいそうにおもってな 「おめぇら、よってたかっていじめてかわいそうでねぇか」 っていったんだと。そしたらわらしは 「きつねはひとだますからぶっころしてやるんだ」 っていうと、また棒で子狐を叩き始めたんだと。それをみていた男は我慢できなくなってなぁ 「わかったわかった、それならこの金やるから子狐をおらさよこせ」 って有り金の十文をわらしたちに渡したんだと。わらしは喜んで狐を男に渡してどっかにいってしまったんだと。男は子狐を放してやるとなぁ、子狐は沼の方さ向かって走り出し、男のほうをひょいと振り向いた後そのまま藪の中さ姿を消したんだと。 さぁ、男は金がねくなったもんだからしかたなしに家さ戻ったんだと。家にはわずかな米しか残っていねぇもんだから何も食わねぇでそのまま布団かぶって寝てしまったんだと。翌元旦の朝のこと、男は目覚ましたんだども、お供えするかざりもなんもねぇもんでなぁ、せめて新しい水でも備えようと井戸から水を汲んで神棚さ供えたんだと。 そしたら昨日の晩から何も食っていねぇもんで腹の虫がぐぅぐぅぐぅぐぅ鳴るもんでな、残っていたわずかな米を鍋さいれて、近くの海からとってきたわかめと一緒におかゆを作ったんだと。おかゆができあがり鍋のふたをとってみっとなぁ、最初に入れた米よりなんだか多く入っているような気がしたんだと。 んだども気のせいだべ、ってことで男はわかめがゆで正月を祝ったんだと。んだども全部食ってしまっては次の日から米がねぇ文だから少しおかゆを残したんだと。 次の日、残したおかゆさわかめと水をいれて火にかけていたんだと。そしてふたをあけてみたら昨日の同じくらいの量のおかゆが入っていたんだと。次の日も、そのまた次の日も、食っても食ってもおかゆは一向に減らなかったんだと。男は狐が恩返ししてくれたんだべ、って思ってんだと。 その話が人づて人づてに離していくうちにいつのまに元旦の朝に水を汲むといいことがある、って話のほうになったんだと。それから津軽では元旦の朝に水を汲む若水が行われるようになったんだと。 まんが日本昔ばなしの本をお探しの方はこちら ![]() |
鬼田
むかしなぁ、鰺ヶ沢町の赤石川のほとりさ孫左衛門っちゅう男が住んでいたんだと。孫左衛門はなまけもんでたいそうがけまがり(つむじまがり)なもんでなぁ、昔は田んぼやら蔵やらたくさんあったんだども、孫左衛門が働かねぇもんだからどんどん売り払ってしまってなぁ、ついには荒れ果てた田んぼだけになったんだと。 んだども孫左衛門はひとりになって気楽になったといってはまいにちまいにちごろごろしては酒を飲んでいたんだと。 ある年の節分になぁ、見るに見かねたむらのもんが孫左衛門の家さ豆をもってきてなぁ 「おめぇの親父は年の祝いをちゃんとやったもんだ。おめぇも祝い事だけはしておくもんだぞ」 っていってなぁ、おにはそとー、ふくはうちー、って叫びながら豆まきしたんだと。一通り終わって村のもんが帰るとなぁ、孫左衛門はおもしろくねえもんで 「福はそとー、鬼はうちー」 っていいながら村のもんがのこした豆をばらまいたんだと。そしたら天井の方からごそごそ物音が聞こえてなぁ 「ほれ天井から鬼が豆くいにやってきた」 って笑ったんだと。 そんなことがあってからある日のこと、村のもんが孫左衛門の家さやってきてなぁ 「おめえさんもたいしたもんだ、まいちにまいにちごろごろしているだけだと思ったらいつの間にか田んぼたがやしてなぁ」 って言うんだと。なんのことだかわからねぇ孫左衛門が自分の田んぼさいってみるとなぁ、あんだけ荒れていた田んぼがきれいにたがやされていたんだと。村のもんがこのことを口々にほめるとなぁ、孫左衛門は 「なぁに、おらのけやぐ(友人)の鬼がたがやしてなぁ」 ってでまかせいったんだと。そしたら村のもんが鬼をいっぺんみてみてぇってことになってなぁ、最初は孫左衛門も 「おらにしかあわねえから無理だ」 って断っていたんだども話しているうちに本当に来るような気がしてなぁ、次の年の節分で集まることにしたんだと。それまでに何かいい知恵おもいつくべって孫左衛門は考えたんだども何もいい考えがうかばねぇまま節分がやってきたんだと。 村のもんが孫左衛門の家さあつまってなぁ、あれやこれやと話ながら鬼をまっていたんだと。んだどもいつまでたっても鬼が出てこねぇもんでなぁ、しびれ切らした一人が豆をつかむと 「鬼はそとー福はうちー」 って豆まき始めたんだと。それを見た他のもんもつられて 「鬼はそとー福はうちー」 ってはじめたんだと。そしたら天井からごそごそと音がするもんでな、外さでてみっとそこには孫左衛門の家のけむだしから中の様子をうらめしそうに覗いている鬼がいたんだと。 「ほれ、おめえたちがそんなこというもんだから鬼がにげていくじゃないか」 って怒っても後の祭りでなぁ。それから孫左衛門の田んぼをたがやしてくれることはなかったんだと。んだども孫左衛門の家では節分に豆まきしなくなり、鬼の好きなぜんまいをとらねぇことにしたんだと。 まんが日本昔ばなしの本をお探しの方はこちら ![]() |
亡者船(鰺ヶ沢町)
こりゃあなぁ、長ぇこと漁師をやってた爺様から聞いたはなしでなぁ。 俺ぁ、長ぇこと漁師やってんだどもなぁ、ありゃあこんな日のように天気がよくねぇ時に祝言の魚を頼まれてなぁ。ほんとは海さ出たくねかったんだども、断りきれねぇ知り合いだったもんだからしかたねぇんでおそ凪をあてにして無理して船出してみてなぁ。 昼まで漁してたんだどもだんだん雲行きが怪しくなってきてなぁ、こりゃあ時化になるってんで早めに帰ることにしてなぁ。 んだども風は強くなるは波は高くなるはでぜんぜん船が前にすすまねくなってしまってなぁ。それでも港に戻りたい一心で舵を取ってるとなぁ、船出したこと後悔して家族の顔なんかもあんときゃ浮かんできてなぁ、んだども長年している仕事なもんだからおいこらせ、こらせって舵をとっているとな、前のほうさ一艘の船がみえてなぁ、内心ほっとして船のほうさついていったんだ。 んだどもなんだか様子がおかしくてなぁ、どうみても港からどんどん 遠ざかっているもんでなぁ、こりゃおかしいと思ったらやっと気がついたぞ。ありゃあ年寄りから聞いた亡者船でこのままついていくと暗礁の多いところさつれていかれるんで気をつけろって話をおもいだしてな、慌てて船から遠ざかり港のほうさ急いで向き直してこぎ続けるとなぁ、船の姿がふっと消えてしまってなぁ。 ありゃあ、亡者船だったろうなぁ。 まんが日本昔ばなしの本をお探しの方はこちら ![]() |



