彦一の釣り
彦一がなぁ球磨川で魚釣りしてたんだと。そん時にひょこっと八代のお殿様があらわれてなぁ、わしにも釣らせろ、わしにも釣らせろって言うもんだから困っていたんだと。そしたら彦一は 「すこしもつれませぬ。それにえさの鯨の肉がなくなってしまいました」 っていったんだと。そしたらお殿様は 「そんなのお安い御用だ。すぐにもってこさせる」 って家来に言いつけて鯨の肉を持ってこさせたんだと。お殿様はまた見に来るからと言い残すとどこかに行ってしまったんだと。彦一は鯨の肉を籠ん中さひょいと隠したんだと。しばらくしてまたお殿様がやってきて 「彦一、どうじゃ、釣れたか」 って聞くんだと。そしたら彦一は 「一匹も釣れません、さっきから餌ばかりとられます」 っていったんだと。そしたらお殿様は 「よいよい、鯨の肉を持ってこさせよう」 って家来に言いつけてまた鯨の肉を持ってこさせたんだと。彦一はお殿様の目を盗んで肉を籠ん中に隠したんだと。そしてお殿様さ 「こんだけまってもいつ釣れるかわかりませんから釣れましたらお持ちいたしますので城でおまちくだせぇ」 ってなぁ。お殿様はそうかそうかってんで城さお帰りになったんだと。 彦一はのんびりと釣りをしているとなぁ、そこさ河童が現れて 「彦一どん、おらと相撲をすっぺや」 って言うんだと。河童ちゅうもんは人を見るとすぐに相撲をとりたがってなぁ、しまいにやぁ疲れさせて川さひきずるんだと。彦一は 「よしよし、かかってこい」 って河童と相撲をとり始めたんだと。彦一は組んではわざと負けて、また組まれてはわざと負けたんだと。そしたら河童は得意になってもう一番、もう一番って何度も何度も相撲をとったんだと。そしたら彦一は 「ちゃあんとお辞儀をしてから相撲すっぺ」 っていったんだと。河童はその言葉につられてひょいとお辞儀をしてしまったんだと。そしたら河童の皿さある水が零れ落ちてなぁ、河童っちゅうもんは皿の水がねくなると力が入んねくなってばったりと倒れてしまうんだと。んなもんだから河童はその場さ倒れてしまったんだと。 そしたら今度は別の河童が相撲をとろうと川からあがってきてなぁ、んなもんだから彦一は相撲の前にはお辞儀をするもんだとお辞儀をすっと、河童もつられてお辞儀をしてしまうもんでなぁ、またばったりと河童が倒れてしまったんだと。するとまた河童があらわれて彦一がお辞儀して・・・ 彦一は城さ意気揚々と河童を15匹もつれてなぁ 「お殿様、でっけぇもの釣れました。どうぞおおさめくだせぇ」 ってんで河童をお殿様さ献上したんだと。 まんが日本昔ばなしの本をお探しの方はこちら ![]() |
吉備津の釜〜後編〜
さてと昨日のつづきからじゃな。 駆け落ちした正太郎と袖は袖の親類である彦六の家さ身を寄せたんだと。んだども幾日もしねえうちに袖が苦しみだしてなぁ、正太郎と彦六は看病を続けたんだどもついに袖は死んでしまったんだと。これに正太郎はわんわん泣き出してなぁ、弔った後もこれからどうすればいいかわからねかったんだと。 ある日のこと、袖の塚さ行ってみっと隣さ新しい塚ができていてなぁ、娘さんが花を持って弔いさきていたんだと。これを見ていた正太郎が声をかけるとなぁ、娘は 「私が宵に参りにいくと必ずあなた様が先にいらっしゃいます。忘れることができないかたとお別れになられたのでしょう。この塚は私のご主人様の墓で奥様が病のためにかわりに私がお参りに来ているのです」 ってなぁ。これを聞いた正太郎は 「奥方が住んでいるのはここより近いのだろうか。連れをなくしたもの通し、慰めあいたいものです」 っていったんだと。そしたら娘は正太郎を連れて家さ連れて行ったんだと。中さ入ってまっているとなぁ、娘が奥から出てきて部屋さ連れて行ったんだと。そして屏風ごしになぁ、 「連れをなくした通し、慰めあおうと思いあつかましくもやってきました」 っていうとなぁ、奥方が屏風からそっと顔をだして 「またお会いいたしましたね。これまでの仕打ちの報いをお知らせしましょう」 っていうもんでなぁ、顔を見てみっとそれは青い顔した磯良であってなぁ、正太郎はあまりのことに気絶してしまったんだと。 気がついていみっと家だと思ったのはお堂であってなぁ、あわてて家さ戻り彦六にこのことを話したんだと。彦六は狐か狸でも化かされたもんだと思ってなぁ陰陽師のところさ連れてってみそぎをしてもらうことにしたんだと。そしたら陰陽師は 「そなたは今晩にでも命がつきるであろう。今日から四十二日の間、戸を閉めてこ一歩も外に出るではないぞ。間違えても外に出てしまっては死から逃れることはできないぞ」 といわれてなぁ、正太郎の体から足から文字をかいて、護符を家中さ貼って中に閉じこもったんだと。 夜もふけてきたころ、正太郎が部屋の中でじっとしているとなぁ、 「あぁ憎たらしい!こんなところにお札がはってあるぞ」 とそれはそれは恐ろしい声でなぁ、夜が明けたら急いで彦六の家の壁をたたいては昨夜のことをしゃべってなぁ、それならばと次の日の夜は彦六も一緒に起きていたんだと。そしたら正太郎がこもる部屋の窓に赤けえ光がさしこんでな、 「あぁ憎たらしい!ここにも札がはってある」 ってこの世のもんとはおもえねえすさまじい声が聞こえてなぁ、二人とも気を失ったんだと。こんなことがあってからまいばんまいばん夜が明けるのをまっては、昨晩の出来事をかたりあってなぁ、日に日に声が恐ろしくなったんだと。 ようやく四十二日目の夜になり、今晩さえすごせれば終わるもんでなぁ。正太郎は特に注意して部屋にこもっていたんだと。そしたらだんだん空があけてきてなぁ、正太郎は壁越しに彦六を呼んだんだと。 「ここまでの間、あなたの顔を見ておりません。早くお会いしてこれまでのことを話して気晴らしをしたいと思います」 って言ったんだと。彦六も 「もう何も心配はいりません。はやくこちらへいらしてください」 ってなぁ、正太郎が戸を開けると うわっ って叫び声が響いてなぁ、彦六はしりもちついちまったんだと。こりゃあ正太郎のみに何かあったに違いねえってんであわてて斧もって外さ飛び出すと、明けたはずの空がまだ暗く月がぼうっと光っていてなぁ正太郎の家さはいってみっと戸があかったままで家ん中にも表にも正太郎の姿を見つけることができねかったんだと。 戸口の壁さ血が流れ落ち、軒先に男の髪の髻(もとどり)がゆらゆらと・・・ まんが日本昔ばなしの本をお探しの方はこちら ![]() |
吉備津の釜〜前編〜
嫉妬深い女は夫にとって手に負えねえけども、年老いてみればそのよさがわかるなんていうが、だれがそんなことをいったんだべなぁ。 むかしなぁ吉備の国さ井沢庄太夫ちゅうもんがいたんだと。その一人息子に正太郎っちゅうもんがいたんだどもこの正太郎が親に似ずにまいにちまいにち遊びほうけていてなぁ、庄太夫はどうにかならねえもんか考えていたんだと。考えたすえに、きれいな嫁っこを持たせれば身も固くなるだろってな。いろいろな人さ聞いて吉備津神社の磯良っちゅう娘さんがいいってことになってな。早速話し合って婚礼の準備を進めたんだと。 んで、吉備津神社では御釜祓ちゅう釜占があってなぁ、釜さ湯はってその沸きあがる音を聴いてなぁ、音が鳴り響くと吉でなぁ、音がまったくならねぇと凶なんだと。 早速釜さ湯をはってぐらぐら煮始めたんだと。んだどもちっとも釜は音をたてねえもんでなぁ、これを神主のかかさんさ話したんだと。かかさんはちっとも気にしねぇでなぁ、 「音がなんねぇのは神官が身清めねかったんだろう」 って御釜祓を気にしねえで婚礼をしたんだと。 磯良は朝から晩まではたらいてなぁ、舅姑の世話をよくしたもんだから正太郎も最初は仲むつまじく暮らしていたんだと。んだども正太郎の悪い癖がうずきだしてなぁ、袖っちゅう遊女の身受けをしてなぁ、家をでたっきり帰ってこなくなったんだと。 それでも献身的につくす磯良をみて庄太夫はなんとかしなけりゃなんねえってんで、正太郎を無理やり連れ戻して家の中さ閉じ込めたんだと。磯良は正太郎の世話を勤めながらも袖の方にも暮らしに困んねえようにと物を送ったりしたんだと。 そんなある日、家ん中に正太郎と磯良の二人っきりの時になぁ、正太郎が 「わしゃあ、今までの行いをただ悔やむばかりである。袖は生まれつき身寄りがないもんでなあ、このままだとまた元の遊女に戻るかもしれん。京の人は情にあついと聞くからそこへつれてって奉公させたいと思う。んだどもわしゃあ今は動くことができねえもんだから、金の工面をして袖に与えてやってくれねえか」 って言うんだと。磯良は正太郎が改心したと思ってなぁ、自分の着物を売ったり、親さ嘘ついてまでお金を工面して正太郎さ渡したんだと。 正太郎はお金をもらうとこっそり家を抜け出して袖と一緒に駆け落ちしたんだと。 これにはさすがの磯良もまいってしまってなぁ、うらみにうらんでとうとう重い病にかかってしまったんだと。庄太夫は磯良を不憫に思って医者を呼んで看病にしたんだども日に日に体がやせ衰えていったんだと。 今日はここまで続きはまた明日にでも話してやっからなぁ。 まんが日本昔ばなしの本をお探しの方はこちら ![]() |
はだか武兵
むかしなぁ、中仙道中津の宿の西生寺っちゅうお寺の大銀杏の根元にある祠んとこさ一匹の女狐が住んでいたんだと。女狐は暇で暇で仕方なくてなぁ、なんか面白いことでもねえかって思っていたんだと。そしたらそこさ二匹の男狐がやってきて 「そんなら疫病でも流行らせっぺ」 っていったんだと。この話さ女狐ものってそれからというもの毎晩毎晩大銀杏の下でこんこんちきちきって踊りはじめたんだと。そしたらあたりの部落さ疫病が流行りはじめて村のもんは困ってしまったんだと。 ある晩、村の男が女房の疫病が直るように西生寺さお参りしたんだと。その帰り道さなぁ大銀杏の方からなんだけ変な声が聞こえてきたんだと。こっそり近くさよってみると三匹の狐が奇妙な踊りをしてなぁ こんこんちきちきこんちきちき はだか武兵にゃ知らせるな はだか武兵がこんように こんこんちきちきこんちきちき ってなぁ。これを聞いた男は武兵っちゅう男を探しはじめたんだと。男は武兵を探しだすと女房の枕元さ連れてったんだと。そして男を部屋の外さ出して武兵がなんかごにょごにょやりだすとな、女房がうなったかと思うと熱がすぅーっと下がってな、あっという間に病気が治ってしまったんだと。 これを聞いた村のもんは次から次へと武兵を呼んでなぁ、一軒一軒まわっては裸で枕元さ座っては病気を治したんだと。女狐はせっかく流行らした疫病が治されてしまうんで祠のなかさ引っ込んでしまったんだと。 武兵が疫病を治せるにはこんなことがあってからなんだと。 武兵が木曽からの帰り道、夜もすっかりふけてしまったもんだからしかたねえんで目の前さある神社で一夜を過ごすことにしたんだと。そしたらそこには一人のおじいさんがいてなぁ、武兵に声を掛けたんだと。 「わしゃあ疫病神じゃ。ここでおうたの何かの縁。わしの兄弟分にならんか。わしが誰かに取り付いて病気にさせる。そこにおまえが来たらわしは退散するというわけじゃ」 ってなぁ。それを聞いた武兵はなにやら面白そうだったんで兄弟分になったんだと。 そんなことがあってから武兵は病気を治せるようになったんだと。んだども一度だけ手こずったことがあってなぁ。 大久手の宿さ泊まっているお姫様が重い病気にかかってしまったんだと。その時に武兵が呼び出されて枕元さ座ったんだどもいつまでたっても熱が下がる様子はなかったんだと。一晩たってようやく熱が下がってなぁ、あとで疫病神さ聞いたら 「あんなかわいい姫様なら長居をしたくなるもんだ」 ってなぁ。 姫の病気を治したんでお殿様がなんでも褒美を取らっていったんだと。んだども、武兵は 「わしは見てのとおりはだかですので何もいりません」 ってそのまま引き上げたんだと。 まんが日本昔ばなしの本をお探しの方はこちら ![]() |
百合若大臣話(福岡県玄海島)
むかしなぁ、あれは嵯峨天皇のころの話でなぁ、筑紫の国司である百合若ちゅうもんがおったんだと。百合若は気は優しく力持ちでなぁ、部下にも慕われていたんだと。 そのころ玄海には海賊が暴れていてなぁ、これはどうにかしなきゃなんねぇと思っていたところに天子様から命令が下ってなぁ、百合若を筆頭に海賊を退治するために海さでたんだと。 百合若はそれからまいにちまいにち船の上で暮らしては海賊と一進一退の戦いをしてなぁ、ついに3年目になってようやく海賊を倒すことができたんだと。 百合若は戦いに勝てた喜びと3年間毎日戦っていたもんだからすっかり疲れてしまってなぁ、筑紫さ戻る途中に玄海島さ立ち寄ってからかえることにしたんだと。百合若は島に着くなりぐうぐうぐうぐう眠ってしまってなぁ、三日三晩ずっと寝ていたんだと。 百合若が目を覚ますとなぁ、そこには百合若が乗っていた舟がなくてなぁ、それどころか家来の姿もどこにもなかったんだと。実は百合若の家来である別府貞澄、貞貫兄弟が玄海島で百合若が寝ている隙に百合若殿は死んでしまった、って嘘ついてなぁ、眠りこけてる百合若だけを残して舟を出したんだと。 別府兄弟は筑紫にもどっと戦いに勝ったこと、そして百合若が死んでしまったことを伝えてなぁ、二人は百合若がなっていた国司になろうとしたんだと。しかも、百合若の奥さんの春日姫を妻にしようとしたんだと。 んだども春日姫は百合若が死んだことが信じらんなくてなぁ、別府兄弟の申し出に首を縦に振らなかったんだと。んだから別府兄弟は怒ってしまってなぁ、春日姫を山ん中さある牢屋に閉じ込めたんだと。 そんな時、百合若が大事にかっていた緑丸という鷹がいてなぁ、戻ってこない主を探しにいったんだと。そしたら玄海島を飛んでいると懐かしい主の姿を見つけてなぁ百合若は指に傷をつけ、血で木の葉に手紙を書き春日姫の下へ送るように命令したんだと。緑丸はすぐさま飛び立ち、山ん中さある春日姫の牢屋さ行ったんだと。春日姫は緑丸が持っていた手紙を見ては百合若が生きていることに涙を流して喜んでなぁ、すぐさま手紙を書いたんだと。そして春日姫は手紙と一緒に硯と筆も託して 緑丸を放したんだと。 緑丸は硯の重さに四苦八苦してなぁ、んだども主人の命令を果たそうと必死と飛び続けたんだと。そして玄海島が見えっとなぁ、最後の力をふ りしぼってやっとこさたどりついたんだと。んだども玄海島につくと緑丸はぐったりとして動かなくなってなぁ、百合若は緑丸を手厚く葬ったんだと。 百合若は春日姫からの手紙を読んでなぁ、別府兄弟の横暴振りを読んで怒りに打ち震えたんだと。そしたら玄海島さ漂流した舟がやってきてなぁ、百合若は舟にのせてもらって筑紫さ戻ったんだと。筑紫では百合若はきたねぇなりのままで苔丸ってなのって様子を伺っていたんだと。 あるひ別府兄弟の前で競射会が行われることになったんだと。そこには百合若しか引くことができない鉄でできた弓がおかれてなぁ、みんなひこうとしたんだども誰一人弓を引くことができなかったんだと。そしたら群衆の中から苔丸がでてきてなぁ軽々と弓を引くと 「我こそは百合若である!」 って的から別府兄弟に狙いを定めて矢を放ってなぁ、別府兄弟の胸を射抜いたんだと。まわりのもんは百合若が戻ってきたことに喜んでなぁ、すぐに春日姫を救い出したんだと。 まんが日本昔ばなしの本をお探しの方はこちら ![]() |
大蛇とこくぞうさん
むかしなぁ、修行のたびをしているこくうぞうさん(虚空蔵さん)がいたんだと。 こくうぞうさんが伊勢の国へやってくるとなぁ、ある娘さんがこくぞうさんを一目みるなり恋に落ちてなぁ、こくぞうさんさ思いを寄せたんだと。んだどもこくぞうさんは 「修行の妨げになるので申し訳ない」 と言い放ち旅と続けようとしたんだと。 これを聞いた娘さんはかっときてなぁ、こくぞうさんがあきらめきれねぇ執念のせいか、みるみるうちに大蛇に姿を変えてこくぞうさんを追いかけたんだと。 これにはこくぞうさんも驚いてなぁ、あわてて大蛇を振り切ろうと走り出したんだと。 どれくらい走っただろうか、大蛇の姿がみえねくなったもんだから木陰で一休みしはじめたんだと。そして、小便がしたくなったもんでなぁ、草むらさ用を足しているとそこには大蛇がいてなぁ、こくぞうさんへの執念と小便引っ掛けられた恨みが合わさったもんでなぁ、こくぞうさんはあわてて逃げ出すものの大蛇はさっきよりも力を出してこくぞうさんを追っかけたもんで、もう少しで追いつきそうになったんだと。 こくぞうさんが赤坂にある金生山の頂上さつくとすぐ後ろに大蛇が迫っていたもんでなぁ、岩さ穴が開いていたもんでそこさ隠れたんだと。大蛇はこくぞうさんが隠れている岩をみつけっと岩さまきついて力をいれて締め上げたんだと。岩はめきめき音をててて今にも壊れそうになるもんでなぁ、 「頼むから許してくれ、おまえを権現様としてまつるから許してくれ」 っていうとなぁ、大蛇は怒りをといたのか岩からはなれてどこかへ行ってしまったんだと。 こくぞうさんは約束したとおり大蛇を権現様として祀ってなぁ、そこを蔵王権現、またの名を蛇王権現といってなぁ、明星輪寺の裏っがわさいまでも残っているんだとさ。 まんが日本昔ばなしの本をお探しの方はこちら ![]() |
安珍と清姫
むかしなぁ、安珍という修行者がいたんだと。安珍は熊野権現様へ修行するために遠く奥州白河からまいにちまいにち熊野をめざして歩いていたんだと。 ある日のこと、安珍が真砂あたりを歩いているとなぁ、すっかり日も暮れたんで一夜の宿を借りることにしたんだと。訪ねた先は真砂の里の庄屋さんの家でなぁ、庄屋さんは一夜の宿を快くかしたんだと。 さて、庄屋さんには一人の娘がおってなぁ、名を清姫といってそれはそれは美しい娘さんなんだと。安珍と清姫はお互いに一目会うなり心奪われてなぁ、二人して一夜を過ごしたんだと。夜も明けようとするころ、安珍は熊野へ行かねばならねぇ修行の身でなぁ、二人は別れが惜しくなったんだと。 んだども安珍は修行を終えなければならねぇもんだから 「修行を終えたらかならず戻ってまいります」 と清姫に約束して熊野さでかけたんだと。 安珍は熊野についたんだどもさっぱり修行に身が入んなくてなぁ、それを和尚さんがちゃんと見抜いていたんだと。和尚さんは安珍を呼び出してなぁ、 「そなたの心の迷いをたちきること、そして御仏の御慈悲にすべてをささげるのじゃ」 っていったんだと。安珍は己の心の迷いを見透かされたのか、今まで以上に修行に専念しついに清姫への思いを断ち切ったんだと。そして熊野での修行を終えてまた修行の旅に出かけたんだと。 そうとはしらない清姫はなぁ、ついには待ちきれなくなって熊野さ安珍に会いに行くことにしたんだと。清姫が熊野さ着くとなぁ、道行く人に安珍の事を聞いたんだと。そしたらその人は 「安珍様なら熊野での修行を終えて先ほど旅に出ましたよ」 っていったんだと。これを聞いた清姫は半狂乱になってなぁ 「安珍め、私のことをわすれてぬけぬけと・・・」 ってぞうりを脱ぎ捨て服は乱れ恐ろしい剣幕で安珍を追いかけたんだと。そしたら清姫の顔は世にもおぞましくなり体は蛇に、口から炎を吐きつけてあっという間に大蛇になってしまったんだと。そして安珍が日高川の渡し舟に乗るとなぁ、後ろから大蛇に化けた清姫が 「おのれ、安珍!わらわを捨ててどこへ行く!」 ってものすごい剣幕で舟を追いかけたんだと。これには安珍も驚いてなぁ、船頭さんにいそいで向こう岸まで舟を焦がせると一目散に逃げ出したんだと。大蛇もあとをおってなぁ、安珍は走り続けて道成寺にやってきて助けを求めたんだと。道成寺の坊さんたちは考えてなぁ、ちょうど修理していた鐘の中さ安珍を隠すことにしたんだと。 そしたらずるずるとものすごい音を立てて大蛇がやってきてなぁ、道成寺の坊さんは驚いて逃げ出してしまったんだと。鐘の中では安珍が息を潜めていたん だども、 「ここにいたのか安珍!わらわの思い果たしてくれるわ」 っていうやいなや鐘に巻きついて口から炎を吐き出したんだと。安珍は熱くて熱くてたまんねぇんだども、なすすべなくてお経をずっと唱えていたんだと。そして鐘が真っ黒こげになってしまうとなぁ、大蛇は我に帰ったのか鐘から離れて日高川さ身を投げてしまったんだと。 いままで隠れていた道成寺の坊さんたちが鐘を冷やして中をのぞいてみるとなぁ、そこには黒焦げになった安珍がいたんだと。坊さんたちは安珍を手厚く葬ることにしたんだと。いまでも道成寺には安珍を葬ったとこがあってなぁ、そこを安珍塚と呼んでいるんだとさ。 まんが日本昔ばなしの本をお探しの方はこちら ![]() |



