雨月民話風呂
メールマガジン民話万象でご紹介いたしました民話の再編集や、時節に応じました民話の紹介を行っております。 また、時折雨月物語についてもふれていきたいと思います
第三十六話 仙台不美人ばなし
仙台高尾


むかしなぁ、江戸の吉原っうところに高尾太夫というそれはそれはきれいな花魁がおったんだと。高尾太夫はなぁ、一目眺めるだけで世の男達は骨抜きになっちまうほどそれはそれはびじんだったんだと。

んなもんだから江戸っ子だけでなく遠く江戸にやってくるお殿様も高尾太夫の噂を聞きつけてなぁ、そんなかでも特に伊達藩の綱宗公がたいそうお気に召してなぁ、

「わしの目方とおなじだけの小判を渡すから高尾太夫を身請けしたい」

と高尾太夫のいる大見世のご主人の目の前に、どれくらいだったかのう、たしか七千八百両だったかのう、ともかくそんぐれぇたくさんの小判を目の前に積んで頼んだんだと。

それをみたご主人はなぁ、

「伊達様に身請けしていただけるのであればこんな光栄なことはない」

って喜んで高尾太夫を身請けすることに同意したんだと。

んだども、高尾太夫はうかねぇ顔してな。というのもな、高尾太夫にはすでに浪人だけんども操をたてている島田重三郎っつうもんがいてなぁ。重三郎は高尾太夫を身請けするためにせっせと働いていたんだとなぁ。高尾太夫も自分の気持ちに偽りがないことの印として重三郎に反魂香という香を渡したんだと。簡単に言やぁ、二人はお殿様でも引き裂く事ができねぇほど深い仲だったんだと。
んなもんだからどんなに主人が高尾太夫に頼んでも、綱宗公の家来が頭下げても、目の前にきれいな着物やら小判やらを見せられてもけっして首をたてにふんなかったんだと。

んなもんだから綱宗公は高尾太夫を屋形船に誘ったんだと。これには主人のすすめがあったのか、なんども断るのは野暮だと思ったのかは知んねえけどな、高尾太夫は綱宗公の誘いに応じたんだと。
屋形船ではなぁ、綱宗公が高尾太夫に一生懸命話しかけんだども、ちぃーっとも高尾太夫は生返事ばかりでなぁ。んだども綱宗公はそんなことおかまいなしに高尾太夫にいいよったんだと。

「わしと一緒に仙台で暮らさんか」

っていうんだども、高尾太夫は

「あちきは、心に決めた人がありんす。その話なかったことにしてくんなまし」

って大きな声で断ったんだと。

さぁ、まわりに家来のいる前で断られたもんだから綱宗公は頭にかぁーってきてなぁ、家来に命じて高尾太夫を屋形船の梁に縛ったんだと。

「もう一度言うぞ、わしと一緒に仙台で暮らさんかといっているのだ」

綱宗公は声を荒げていったんだども、高尾太夫も負けェくらい大きな声でなぁ

「あちきは心に決めた人がありんす」

っていったもんだからなぁ。綱宗公は我慢ならなくなって刀を抜いて高尾太夫の首をはねたんだと。

それからというもの、あんまりにもよくない行為をしたっつうことで幕府から若いのに隠居させられてなぁ。高尾太夫のたたりで仙台には美人が生まれなくなってしまったんだとさ。

そうそう、高尾太夫が最後まで愛した重三郎はなぁ、高尾太夫の名残にと反魂香を焚いたんだと。そうしたら香は懐かしい高尾太夫の香りがしたんだと。高尾太夫を思い浮かべながら、ふと煙に目をやるとなぁ、煙から高尾太夫の姿があらわれてなぁ。

「おぁ、高尾殿。会いたかったぞ」

って涙ながらに話すとなぁ

「あちきもあいたかったでありんす」

って二人であれやこれやの想い出話を語り合ったんだと。そして香が消える時になぁ

「香の切れ目が縁の切れ目。無駄に使わないでくんなまし」

って重三郎に戒めて消えたんだと。
重三郎はいつまでもいつまでも反魂香の残り香を惜しんだんだとさ。



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【2006/02/13 22:27】 | 民話(仙台市若林区) | トラックバック(0) | コメント(0) |
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