雨月民話風呂
メールマガジン民話万象でご紹介いたしました民話の再編集や、時節に応じました民話の紹介を行っております。 また、時折雨月物語についてもふれていきたいと思います
第二話 お茶呑み孕子
「お茶呑み孕子」


むかしなぁ、仙台の秋保は梨野高田ちゅうとこさそれはそれは豊かな長者どんがおったんだと。長者どにゃあ年頃の娘がいてなぁ、それはそれはたいそうかわいがっていたんだと。

ある日のこと、長者どんの屋敷さ修行をしている若いお侍さんが一夜の宿を求めてやってきたんだと。
その侍に娘は惚れてまってなぁ、長者どんもたいそう気に入ったんだと。長者どんはぜひともここに残り婿になってほしい、と頼んだんだと。
んだども、お侍さんはまだ修行中の身なもんでなぁ、丁重に断って、翌日お礼を言って旅さ出てしまったんだと。

娘はたいそうがっかりしてなぁ、お侍さんがいた部屋を片付けたんだと。そしたらお侍さんが飲み残した湯のみがあってなぁ、娘は思いが募ったもんだなぁ、そのお茶を一気に飲み干したんだと。

そしたらなぁ、日に日に娘の腹はどんどんふくらんでいったもんで長者どんは心配してなぁ、お医者さんを呼んでみてもらったんだと。そしたら娘はおめでただったんだと。
これには長者どんも娘もびっくりしたそうじゃ。
「なんで孕むんだべなぁ、あの時飲み残したお茶飲んだからだべなぁ」と不思議がったんだと。

その後、娘は赤ん坊を産んだんだけども、それが原因で死んでしまったんだと。
長者どんが赤ん坊を育てていたある日のこと、あん時のお侍さんがまたやってきたんだと。長者どんから娘の話を聞いたお侍さんはなぁ、赤ん坊を抱きかかえたまま扇であおいだんだと。
そしたら、赤ん坊が風さあたって、すーっと消えてしまったんだと。

「長者どんの赤ん坊はお茶からできた泡だったんじゃねべか」
と、いわれたんだと。
それから誰も飲みの残しのお茶をのまねえようになったんだと



いかがでしたでしょうか?それでは続けましてメルマガ「江戸の怪談」の発行者であり
ますryoさんのご協力によります「不思議懐胎」をお送りいたします。
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「不思議懐胎」

はかない夢物語。都、二条の近くに、名は忘れたが、ある書道家がいた。
家も落ちぶれたので、職も求めず、静かな住居に暮らしていた。
けれども能筆の聞こえ高く、都中の、つてのある家の子らは、彼のもとを訪ね、指南を受けたので、弟子も多く出入りしていた。

中でも石川七之丞という、年はハタチで、今風のヤサ男。身も小奇麗なうえ、芸も達者であり、師匠も心にかけて教え、大勢のうちの十数人に選ばれていた。
家への出入りも特に頻繁な、秘蔵の弟子であった。
師の娘は、おくにという。今年十七で、他に男子もなければ一人きり、
とても大事に育てられた。何不足なく女の道を学んでおり、器量もよかった。

家の女たちは、いつも誰彼と弟子が出入りするのを垣間見て、
「彼はいい男だわ。でも、じじくさーい」
「誰は明るいけれど、顔悪ーい」
「でもちょっと今風よねー」
奥深く、こもっている暇な時間のなぐさめに、品定めして遊んでいたが、
「中でも七之丞さんと肩を並べる人はいないわ」
いつも意見は、一致し、娘も彼が来れば、なんとなく嬉しい気がして、
騒いでいる女たちに混じり、どきどきしながら覗いたりした。
「またまた悪いことをなさって、つつしみなさいな」
からかわれては、顔を赤らめて立ち去っていた。

ある夏、よほど熱かったのか、七之丞は家に来るとすぐに水を一杯、請うた。
その呑みさしを下女が持って来て、
「誰かさんのおあまりよ。いやではありませんよね」
娘は実に嬉しい気持ちを冗談でごまかして、ひょいと呑んでしまった。

それから娘の腹が、いつしかふくれ始めたので、何の病気だろうと
看病しているうちに、月を重ねて大きくなり、ついに美しい子を生んだ。
男の子であった。父母は驚いた。
「なんということをしたのです。恥知らずな。父親は誰ですか」
「神に誓い、夢にも知りません」

責めても恥じて泣くばかりで。父母も考えてみれば、誠に深窓の内にいて母のそばを全く離れたことがない。下々の女たちも、
「仮にもあやしい様子を見たことはありません」
口を揃えて、かわいそうだと言う。さて、あやしいことではあるが、孫と思えば、
いたいけなもの。そのまま養ううちに、月日が流れ、いつしか三歳になった。

父は、あるとき、何を思ったのだろうか、親しい弟子ばかりを集めて、
一日もてなし、もの陰で例の子に言うには、
「おまえの父がいれば、出て行って抱かれなさい」
念をこめて出してやると、子は心得た様子で、座敷を見まわし、七之丞の膝に駆け上がるところを、危ない! とばかりに抱こうとすれば、たちまち消えて、
そこらじゅう水びたしになり、小さな衣ばかりが残っていた。

初めて、あの水を呑んだことを女たちが思い出し、騒ぎだした。父母は、
「こうまで宿世(すくせ)の縁が深いものを、どうして見過ごされよう」
と、七之丞の父母にも伝えて聟(むこ)となし、家もゆずって、後には、誠の子も多くできたという、めでたしめでたし。

『万世百物語』巻一ノ二「不思議懐胎」/寛延四年刊
/これは『雨夜の友』(元禄十年刊)の改題本




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【2005/11/03 16:19】 | 民話(仙台市太白区) | トラックバック(0) | コメント(0) |
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