さんこ狐
むかしなぁ、鰺ヶ沢にさんこ狐っちゅう人を化かしす狐が住んでいたんだと。 ある日のこと、高沢寺の伝次郎ちゅう長老さまがなぁ法事さよばれたんだと。たくさんのお土産をもらって夕暮れを歩いているとなぁ、源平やじのあたりの藪から一人の女が出てきたんだと。よくみっと幼馴染のお千代だったんだと。伝次郎はこんな時間にお千代が藪から出てくるわけねぇって思ってなぁ 「おめぇ、女にうまく化けたとおもってっけど尻っつから尾っぽがみえてるぞ」 っていったんだと。そしたら女はびっくりして狐に戻ってなぁ、 「おめぇさんは何でおらの正体がわかった?」 ってさんこ狐が伝次郎に聞くとなぁ、 「わしのかぶっている帽子にはなぁ、世の中にわからないことは何もなくてなぁ、おめえさんの正体もわかるし、これさえかぶっていれば魚屋で魚とってもばれねぇんだぞ」 っていったんだと。さんこ狐はこの帽子がほしくなってなぁ、伝次郎に譲ってくれねぇか頼んだんだと。そしたら伝次郎は 「なんならおめぇさんの持っている宝生の玉(ほうしょうのたま)ととっかえるならかまわねぇぞ」 っていったんだと。狐は悩んでなぁ、 「それなら十四日だけとりかえっぺ。この玉をなくしたらおら、狐の神様にしかられっから大事にしてけろ」 ってお互い帽子と宝生の玉を交換したんだと。 伝次郎は早速帰り道に宝生の玉をのぞいてみっとなぁ、町の様子はもとより遠くの島もはっきり見えてなぁ、それはそれは楽しんだんだと。そのころさんこ狐は帽子をかぶってさっそく高長さある魚屋さいってなぁ、幼鰤(ふくらげ)をせっせと綱さ結んでいたんだと。もちろん伝次郎の帽子に効き目なんてねぇもんだからなぁ、魚屋はその様子を笑いをこらえて後ろさまわって、狐を棒でぼこぼこにたたいたんだと。 さんこ狐は命からがらやまさかえってなぁ、そこで伝次郎に騙されたことにようやく気がついたもんでなぁ、どうにかして宝生の玉を取り返さなければなんねぇ、って仲間の狐と考えたんだと。そしたら湯船小屋敷の狐がなぁ、 「伝次郎は二歳のときに両親と別れ、駒越の太兵衛婆さまさ育てられて十三歳の時さ高沢寺にあずけられたから婆さまさばけたらいいでねぇか」 っていったんだと。さっそくさんこ狐は婆さまさ化けて高沢寺さいったんだと。伝次郎は婆さまを奥座敷さ通してもてなすとなぁ、婆さまが 「おめぇ、きれぇな玉を拾ったそうだが冥土の土産に見せてくんねえか」 っていったんだと。伝次郎は和尚様にもだれにもいってねぇのに婆さまが玉のことをしっているわけがねぇと思っていったんは断ったんだと。んだども婆さまがしつこく頼むもんでなぁ、しかたなく箱ん中さ入れた宝生の玉を見せたんだと。婆さまが玉を手に取るとなぁ、 「これこそ我が宝生の玉である」 っていうやいなや婆さまは狐の姿さ戻ってあっという間に逃げ出したんだと。 玉をとられた伝次郎は病気で寝込んでしまってなぁ、和尚さんが何がほしいか伝次郎に聞いたんだと。そしたら 「旗を二本、世話方を三十人、裃を三十人分、籠を一挺用意してけろ」 って頼んだんだと。和尚さんは何事かと思ったんだども和尚さんは伝次郎の言うとおりこれらを集めたんだと。伝次郎は旗さ「スギノミヤ・キサコ大明神」と書いてなぁ狐の神様なりすまして行列を作って山さでかけたんだと。そして野原さついて 「さんこーーー、さんこーーー」 って呼ぶとなぁ、林の中からさんこ狐がやってきたんだと。さんこ狐は狐の神様がやってきてそれはそれは驚いてなぁ、その場で平伏したんだと。伝次郎は 「人間に玉をとられたとのこと、その汚れを清めるために三十日間わしがあずかる。三十日たったら取りに来るように」 っていってなぁ、さんこ狐は伝次郎さ宝生の玉を渡したんだと。 三十日たってさんこ狐が神様のところさ行くとなぁ、 「そんな玉を預かった覚えはないぞ」 って散々しかられたんだと。 さんこ狐はまた伝次郎に騙されたことに気がついてなぁ、また仲間の狐と玉を取り返す計画を考えたんだと。今度は殿様さ化けることにしてなぁ、高沢寺さ 「あさって、殿様が種里への墓参りの途中高沢寺による。お茶役を伝次郎に申し付ける」 っちゅう手紙を送ったんだと。寺ではお殿様がやってくるって大騒ぎだったんだども伝次郎は今頃お殿様がやってくるのはおかしい、これは狐の仕返しだべって考えてなぁ、舞戸のほうを駆け回って大きい犬を何匹も集めて縁の下さ隠したんだと。 あくる日に遠くから大名行列がやってきてなぁ、伝次郎は小高い丘から宝生の玉をのぞいてみっとなぁ、立派な大名行列は狐の行列でなぁ、籠の変わりに炭俵をかついでふきの葉っぱを笠にしてとりこしばの刀をさしていたんだと。 伝次郎は近くさあった藤の実がなっている枝を折ると急いで寺さ戻って大名行列を出迎えてなぁ、お殿様にお茶を出そうとしたんだと。和尚さんは伝次郎が何か無作法なことをやんねぇか気が気でなかったんだと。そしたら、伝次郎はお茶をお殿様の頭から、 ばしゃぁー ってかけたんだと。お殿様は無礼者って怒ってしまってなぁ、家来は刀さ手をかけたんだと。んだども伝次郎は平気な顔して藤の枝でお殿様の頭をたたいたんだと。 和尚さんはもう気が気でなく赤石の浜さ逃げたんだと。伝次郎は縁側さいって合図をすっとなぁ、いっせいに大きな犬が寺ん中さはいってきたんだと。狐たちはびっくりしてなぁ、犬たちにかまれて散々なめにあって逃げ出したんだと。 それ以来、狐は人を化かしたりいたずらしたりしなくなったんだとさ。 まんが日本昔ばなしの本をお探しの方はこちら ![]() |
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