雨月民話風呂
メールマガジン民話万象でご紹介いたしました民話の再編集や、時節に応じました民話の紹介を行っております。 また、時折雨月物語についてもふれていきたいと思います
第九十壱話 鬼神太夫
鬼神太夫


むかしなぁ、鰺ヶ沢の小屋敷ちゅうところさ一人の刀鍛冶が住んでいたんだと。刀鍛冶には二人のめんこい娘さんがいてなぁ、刀鍛冶は
「わしのあとをつげる腕のいい刀鍛冶を婿さしてぇ」
って考えていたんだと。んだから立派な刀を十本打てるもんでなければ婿にしねえて決めててな、誰も婿になるもんがいねかったんだと。

ある日のこと、この噂を聞きつけた若い男がなぁ、姉娘がほしいと名乗りを上げたんだと。刀鍛冶は立派な刀を十本打つことを条件に出すとなぁ、男は
「しからば七日の間、決して仕事場をのぞいてはいけねぇ」
って頼んでから仕事場さ行き刀を打ち始めたんだと。
んだども一向にとんてんかんてん、って刀を打つ音がちっとも聞こえねえもんでなぁ刀鍛冶は不思議がってこっそり仕事場を覗いたんだと。そしたらそこには男ではねくおっきな竜が口からぼうぼうぼうぼう火を吹いて刀を打っていたんだと。これには刀鍛冶もびっくりしてなぁ、とんでもねぇ約束をしたもんだ、なんとかしなくてはなんねぇってな。こっそりの刀を一本隠してしまったんだと。

七日たって男は仕事場から出てきて刀鍛冶さ刀を渡したんだと。その一本一本はなんとも見事なできばえだったんだと。んだども刀鍛冶は
「九本しか刀がねえから娘のことはあきらめてくれ」
っていったんだと。男は驚いてあわてて刀を数えなおしたんだどもなんべん数えても九本しかねえもんでなぁ、とぼとぼと九本の刀を背負って刀鍛冶の家を出たんだと。そして岩木山のほうさ向かい
「十腰ない。十腰ない」
ってつぶやきながら刀を神社さ奉納したんだと。そこから十腰内という地名ができたんだと。

またあるとき今度は妹娘を嫁にほしいっちゅう若い男がやってきたんだと。今度は仕事場からとんてんかんてんって刀の打つ音が聞こえてなぁ、なんの不思議なこともなく見事刀を十本作り上げたんだと。無事に婚礼もすんである日のこと、刀鍛冶は男に竜の姿の刀鍛冶の話をするとなぁ、男は驚いて
「それは私の兄で鬼神太夫というものです。一心不乱なったあまり竜神様が力を貸してくれたのでしょう。けっして怪しいものではございません」
ってなぁ。刀鍛冶はこれを聞いて残念がったんだとさ。

これには色々な後日談があってなぁ、刀鍛冶がなくなるとき姉娘さ刀を打つときに一番大事な湯加減を伝授して湯舟を渡して分家させたんだと。そこから湯舟っちゅう場所ができたんだと。また妹娘には刀を打つときの使う金敷きを渡したんで鉄敷っちゅう場所ができたんだと。んだども鉄敷は山の上さある不便な所でなぁ、村のもんは川を越えて平地さ移り住んだんだと。そこから越屋敷っちゅう場所ができたんだと。
また、刀鍛冶がくすねた刀にはたたりがあるかもしんねえってな、鳴沢川さ捨ててしまったんだと。その刀が朝晩川の上と下を行ったり来たりするもんでなぁ、魚は尾やらヒレが斬られたり、めを潰したりしたんだと。んだから河童は魚のようになりたくねえもんだから鳴沢川を捨てて他の川さ行ったもんでなぁ、川で遊んでも河童さ襲われることがなくなったんだと。

他にも色々あっけどもきりがねえからここまでなぁ。


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【2006/06/27 20:40】 | 民話(青森県) | トラックバック(0) | コメント(0) |
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