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第百六話 浄円坊

浄円坊


むかしなぁ、東照宮の別当である仙岳院っちゅうお寺さ浄円坊というお坊さんがおったんだと。浄円坊はとてもまじめで心がけが立派な坊さんだったんだと。

その頃は修行の場として出羽三山の一つ、羽黒山さでかけては修行を積んでいたんだと。出羽三山では修験道っちゅう山伏の格好をして燃えている火の上を歩いたりと普通のもんでは到底まねできねぇ修行を積んでいたんだと。

仙岳院から羽黒山までは何日もかけねぇといけないんだども、浄円坊は修行の成果かどうだかはよくわかんねえんだけどもなぁ。韋駄天のように足が驚くほどはやく、釜さごはんをかけて火をつけてそれが炊き上がる間に羽黒山さ往復して戻ってこれるぐらいの足だったんだと。

ある日のこと、浄円坊のお師匠様が重い病にかかってしまってなぁ、浄円坊がつきっきりで看病したんだども日に日に重くなるばかりでいよいよ覚悟しなけりゃならなくなったんだと。そしたら師匠は浄円坊さ向かって
「死ぬ前に最上の豆腐が食べたいのぉ」
っていうもんでな、浄円坊は立ち上がったかと思うとあっというまに豆腐を持ってきて師匠さ食べさせたんだと。

いまでも足の病気や足が速くなるための願掛けとしておまいりが絶えないんだと。


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