地獄から極楽さいったはなし
むかしはなぁ、三度のメシより酒が好きで好きでたまんねぇ男がいたんだと。んだから一日中はたらかねぇで飲んでばかりいたもんでなぁ、家のもんはどうにかして懲らしめることができねぇかと考えていたんだと。 ある晩のこと、男は酒を飲んでぐうすかぐうすかいびきをかいて寝てしまったんだと。これさいわいにと家のもんは男の衣服をはぎとって変わりに白装束をきさせてなぁ、頭さひたいつきをまいて棺桶の中さいれたんだと。そしてふたをしめっと、外さはこんで畑ん中さ放りなげたんだと。 真夜中さなって男が目を覚ますとな、なんだか天井がちけぇように感じたんだと。おかしいと思って額さ手をやるとなぁ、そこにはひたいつきがついていたもんでびっくりしたんだと。よくよくあたりを見回すとそこが棺桶の中だって気がついて、服が白装束だったもんだから自分が死んでしまったもんだと思ったんだと。 しかたねぇんで棺桶のふたをあけて外さでてみたんだと。あたりは真っ暗な闇につつまれていたもんでなぁ、ともかく極楽か地獄かわかんねぇけどもあるくことにしたんだと。 堀切街道を歩いてたまのき街道に入り込んでどんどん西さいくとなぁ、トン、テン、カン、トン、テン、カンって朝から鍛冶屋が刀を打っていたんだと。男には燃え盛る炎と刀を鍛えたたいているときに出ている火花から鍛冶屋が鬼に見えて震え上がったんだと。んだども、しかたねぇんで 「鬼さん鬼さん、ちょっくらおしえてけさい」 って言ったんだと。そしたら鍛冶屋は 「鬼だと?なにばかなこといってる」 って鍛えるのに使っていた鉄棒をふりあげて男に怒鳴りつけたんだと。男は肝をつぶしてなぁ、一目散に逃げたんだと。 「あぁ、鬼がいたということはここは地獄だべな。んだども引き返すわけにもいかねぇなぁ」 ってんでそのまま男は覚悟を決めて歩き続けたんだと。そしたら朝から作業している粉屋のばあさまがいたんだと。男にはそれが三途の川さいる鬼婆に見えてなぁ、んだどもしかたねぇもんで 「ばさま、ばさま、極楽はどこだべ」 って聞いたんだと。そしたらばあさまは 「極楽ならばこの先だ」 って指差したんだと。ばあさまはてっきり男が古川の極楽寺さ行くと思ってなぁ。 男はそうともしらずにばあさまの指差す方向さ歩き続けたんだと。そしたら極楽寺の山門についてなぁ、 「ここが極楽のいりぐちにちげぇねえ」 ってんで極楽寺の山門をくぐったんだと。んだどもまだ夜があけてねぇもんだからうっかり足を滑らせて寺の池さザブーンって落ちてしまったんだと。男は地獄の血の池地獄さ落ちてしまったと思ってなぁ、池のそこさ足がついているのにまったく気がつかねえで 「神様仏様観音様!うかばせたまえ!うかばせたまえ!南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏」 って念仏を唱え続けたんだと。 まんが日本昔ばなしの本をお探しの方はこちら ![]() |
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