阿古耶の松
むかしなぁ、仙台に赤石橋っていう橋があったんだと。この橋はなぁ、大雨が降るたびになんどもなんども流されたんで村人は困っていたんだと。 ある日のこと 「西北の山に大きな松があるから、それで橋を作れば流される事はないだろう」 って巫女がお告げをしたんだと。村人は西北に進むとでっかい山があってなぁ、そこには見たこともねぇおおきなおおきな松の木があったんだと。 さっそく、木を切り倒そうとしたんだけんども、あまりにも木が太くて硬いもんだからなぁ。斧を使って十人がかりでやったんども一日でやっとこさ五分の一しか切れなかったんだと。次の日に続きをやろうとしたんだどもそうしたら木の切り口はきれいさっぱり元に戻っていたんだと。しかたねぇもんだから、また切るんだけども次の日になると元に 戻ってなぁ、まいにちまいにち切っても切っても元に戻るんだと。 ある日なぁ、ある村人が木を切ったあとの切りくずがないことに気がついたんだと 「切りくずを燃やしながら木を切ればいいんでねぇか」 っていうもんだから、木を切りながら出てくる木のくずを燃やしたんだと。そうしたら、木は元に戻らなくなったんだと。ついに五日目には松の木はドスーン、と大きな音をたてて倒れたんだと。 山のふもとにある阿古耶姫というそれはそれは美しい娘がいたんだと。ちょうど木が倒された頃に一人の若者が部屋にいた阿古耶姫の前に現れたんだと。入り口に門番がいて犬一匹入れねぇはずなのにその若者はどこをどうやったのか阿古耶姫の目の前にあらわれたんだと。 「姫様、私はまいにち姫様と顔を会わせていた松の木です。私は切り倒されて仙台に行くことになりました。姫様と会えるのはこよいだけです」 と、若者は泣きながら姫の手をとったんだと。 いよいよ松の木を切り分けて運ぼうとしたんだと。そうしたら、木は地面にぴたっとくっついたまま離れなかったんだと。人を五人、十人とどんどん増やしてもぜんぜん動かなかったんだと。そこに旅姿の阿古耶姫がやってきてな、松の木にまたがって 「みんなのためになることです。どうか動いてください」 っていったんだと。そうしたら不思議な事にあれほど動こうとしなかった松が動き始めたんだと。赤石橋は無事に完成してな、村人たちはたいそう喜んだんだと。それからというものこの松を「阿古耶の松」と誰ともなしに呼ぶようになったんだと。 まんが日本昔ばなしの本をお探しの方はこちら ![]() |
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