雨月民話風呂
メールマガジン民話万象でご紹介いたしました民話の再編集や、時節に応じました民話の紹介を行っております。 また、時折雨月物語についてもふれていきたいと思います
第十八話 遠野物語その4 遠野よもやまばなし 蚕になった姫んこ
蚕になった姫んこ


昔々あるお殿様に一人の姫んこがいたんだと。姫はお殿様の子供として幸せに暮らしていたんだども姫んこがちいさいときに母君をなくしていたんだと。そこでお殿様は後妻をもらったんだと。んだども後妻である継母はなぁ姫んこが邪魔で邪魔でしかたなかったんだと。
そこで父親の留守の時に継母が姫を庭の桑の木の下に連れ出して生き埋めにしたんだと。お殿様が帰ってきて姫んこの姿がみあたんねもんだから継母に聞いてみたんだと。
そしたら継母は、しらねぇ、って答えるもんだからお殿様が姫んこを探したんだと。そうしたら桑の木あたりの地面から湯気がもくもくたちあがっていたんだと。お殿様が掘ってみるとなぁ、姫んこが出てきたんだと。

お殿様は自分の留守中に姫んこが、また危険な目に会うかもしんねぇ、って考えたもんだから、姫んこが埋められていた桑の木で舟を作って桑の枝葉で姫んこの姿を覆い隠して誰かいい人に拾われてくれ、って祈りながら舟を川に流したんだと。ちょうどその時、姫んこが流れていた川には、おばあさんが洗濯していたんだと。
おばあさんが川上をひょいと眺めると舟が流れてきたもんだから気になってなぁ、舟をひきあげたんだと。そしたら、桑の葉にかわいい姫んこが乗っていたもんでなぁ、おばあさんはおじいさんを呼んできて、舟と一緒に姫んこを家に連れて帰ったんだと。二人には子供がいなかったので、姫んこはかわいがられて育ったんだと。

ところがある日のこと、姫んこが急に熱をだしたかと思うと、ころっと死んでしまったんだと。おじいさんとおばあさんはおいおい悲しんだんだどもいつまでもそうしてはいらんねぇもんだから翌日に埋めることにしたんだと。次の日に姫んこの遺体に近寄ると、姫んこの顔から体からなんとも見たことねぇ虫に覆われていたんだと。
二人は

「姫んこにつく虫だから大事にしなければ、なにか食わせなければなんなぇなぁ」

と外に出て色々な木や葉っぱを持ってきたんだども、どれも食わなかったんだと。そしたらおばあさんが

「姫んこが乗ってきた舟はどうだべ」

ていうもんだからおじいさんが姫んこが乗ってきた舟を持ってくると虫は葉っぱを食べ始めたんだと。これでその虫は桑を食べることがようやくわかったんだとな。そしたらその虫が糸を出して繭を作ったんだと。ためしに、その繭から糸をとってみると、丈夫できれいな糸が取れるようになったんだと

そんなある日、お殿様が都にきれいな布を献上することになったんだと。お殿様が国にあんまり良い糸が無く困っていてなぁ。そこで国中に良い糸はないものかとお触れを出したんだと。それを聞いたおじいさんが糸をお殿様に差し出したんだと。さっそくその糸で布を織るとなんとも言えぬ美しい布が織れたもんだからお殿様はたいそう喜んでなぁ、この糸はどのようにして手に入れたか聞いたんだと。おじいさんは、今までのことを全部話したんだと。
それを聞いたお殿様が

「あぁ、姫んこが助けてくれたんだのぉ」

と、おじいさんに褒美を与え、都に布を持って行ったんだと。姫んこは蚕になってお殿様を助けたんだってなぁ


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【2005/12/20 18:43】 | 民話(青森、宮城以外の東北) | トラックバック(0) | コメント(0) |
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