仙台庵
昔の荒町には細谷勘左衛門という名物男がいてな。体は大きくふんどしいっちょで店の中に人を呼んでは朝から晩まで酒を飲んでいたんだと。 んだども勘左衛門は「仙台庵」という雅号があってな、上から読んでも下から読んでもおんなじ文である回文を作るのが得意なんだと。 ある日、朝から酒を飲んでいい気分で歩いていたんだと。そうしたら足がもつれて掘に落ちてしまってな、通りがかりの人が手を貸したんだどもただでさえ太っているもんだからなかなかあがんなくてな、やっとのことではいあがったんだと。そうしたら勘左衛門は 「飯前の酒、今朝の戒め(めしまえのさけけさのいましめ)」 とさらっと詠んだんだと。 他にも江戸さ旅に出たときに江戸の回文の大家と居酒屋に行ったんだと。それでいい気分で翌朝まで飲んでいたんだども、飲み足りねえもんだから宿に戻ってはまた酒を飲もうとしたんだと。宿の主人が二階へ案内しようとすると 「頼むその如何にも二階望むのだ(たのむそのいかにもにかいのぞむのだ)」 と詠んだんだと。これを聞いた宿の主人は感心してな、何か一句書いてほしいと頼んだんだと。そうしたら勘左衛門はなぁ 「外のさけ、飲んで貴殿の今朝の顔(ほかのさけのんできでんのけさのかほ)」 って詠んだんだと。あまりにもすらすらと詠むもんだから江戸の回文の大家も驚いたんだと。 そのうわさがお殿様の耳にも入ってな、お城に呼び出されていろいろと話をしたんだと。そうしたらお殿様がな 「これ、勘左衛門。生娘と金どちらが好きじゃ」 と聞かれると即座に勘左衛門は 「願わくは金、願わくは金(ねがわくはかねねがわくはかね)」 と紙に書いて差し出したんだと。それを見たお殿様はあまりにはやい回文を作ったもんだから望みどおりに大量の金をご褒美として勘左衛門に与えたんだと。 勘左衛門は死ぬまで酒と回文をこよなく愛したんだってなぁ まんが日本昔ばなしの本をお探しの方はこちら ![]() |
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