取り上げ坂
むかしなぁ、村一番の大きな家におっかあと息子の二人で暮らしていたんだと。二人で暮らしていたんだども、おっかあが働き者だったもんだからなぁ、裕福に暮らしていたんだと。 ある日、おっかあは思いたってなぁ、息子を羽山っちゅう霊山に修行に出す事にしたんだと。自分の手を離すのはつらいんだども、将来に家督を継ぐもんだからなぁ。 「楽させて 幼な育ちを する人が 老いて貧苦の 種をまくなり」 こんな歌を詠んでなぁ、羽山は女人禁制なもんだから今度会うのは修行が終わった時なんだども、心を鬼にして送り出すことにしたんだと。 それからどれくらいの年がすぎたのかのぉ。息子が修行にでてから一度も会ったことがなくてなぁ、息子に会いたいおもいが日に日に強くなっていくもんだから 「一回ぐらい会いに行ってもばちはあたんねぇべ」 って考えなぁ。おっかあはついに息子を一目見ようと羽山へ出かけたんだと。 あと、この橋を渡れば息子のいる羽山に行く事ができるっつうところでな、今まではまっさらな空だったんだどもおっかあが橋に足をかけるとどんよりした雲がでてきてなぁ、もう一歩橋を歩くと、今度は空から火の雨がごぉおー、ごぉおーって降ってきたんだと。 「息子の修行の邪魔をしちゃなんねえってことかぁ」 ってな、しぶしぶ帰っていったんだと。 んだども、次の日も橋の前まで行ってなぁ、いざ渡ろうとするんだどもそのたびに雲がたちこめてごぉおーごぉおーって火の雨が降るもんで渡る事ができなかったんだと。んなもんだからそのたびに河原におりては石を一つ取ってなぁ、その石を橋の前で慎重に積み重ねては家に戻っていたんだと。河原から取り上げた石を積むもんだからその坂を誰からと もなく「取り上げ坂」と呼ぶようになったんだと。 そうそう、おっかあが積み上げた石がもうこれ以上積む事ができねぇって頃にな、息子は羽山から帰ってきてな立派に家督を継いだんだとさ。 まんが日本昔ばなしの本をお探しの方はこちら ![]() |
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