雨月民話風呂
メールマガジン民話万象でご紹介いたしました民話の再編集や、時節に応じました民話の紹介を行っております。 また、時折雨月物語についてもふれていきたいと思います
第九十二話 うわばみの恩返し
うわばみの恩返し


むかしなぁ、仙台に花渕善兵衛ちゅうおさむらいさんがいたんだと。ある日のこと、藩の命で江戸さ行くことになってな、花渕浜から舟で江戸へ向かうことになったんだと。

舟が出港して藤塚浜あたりの沖を走っているとなぁ、陸の方からごぉーー、ごーーってけものか何かのうなり声が聞こえたんだと。善兵衛は気になってな、周りがとめるのもきかねぇで舟を浜さつけてうなり声のするほうさ歩いていったんだと。奥へ奥へとすすむとなぁ、そこには喉を真っ赤に腫らして苦しみもがいていたうわばみがいたんだと。

ふつうなら驚いて逃げてしまうんだども善兵衛は怖がるそぶりをみせねえで
「どれどれ、いま直してやっからなぁ」
ってまるで人さ声かけるように話しかけっとなぁ、松の枝を折って先を鋭く尖らせっとなぁ、うわばみの口をこじ開けてのどさできてる腫れ物にぶすっ、って刺して悪い膿を取り除いてやったんだと。そのあと印籠さいれてた膏薬を傷口さ塗ってあげてなぁ、うわばみは大喜びで奥のほうさ消えていったんだと。舟さ残っていた人は善兵衛になにかあったんじゃねえか、って思っていたんだども善兵衛が無事に戻ってきて話を聞いて唖然としたんだと。無事舟は江戸さついて善兵衛も所要をおわらせて、仙台さ戻ったんだと。

ある晩のこと、善兵衛が寝ているとなぁ夢の中さきれいな女があらわれて
「私はあの時助けていただきました蛇です。命の恩人のあなた様にお礼にまいりました。毒蛇にかまれた時の治療薬とかまれない護符をさずけましょう。ただしこれは他の人には漏らしてはいけませんよ」
っていうんだと。

善兵衛はためしにうわばみさ習ったように護符と薬を作るとなぁ、毒蛇は近寄らないわ、かまれてもすぐに直るもんでなぁ近所でも評判になったんだと。善兵衛が噛み付いた蛇をしかるだけで蛇はこそこそ逃げ出したりしたんだと。

噂によると善兵衛ってかいた紙を蛇さかぶせるだけで動かなくなったり蛇が近づかねぇって話なんだと。



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【2006/06/28 20:44】 | 民話(宮城県仙台市以外) | トラックバック(0) | コメント(0) |
第八十九話 栄存法印 後編
栄存法印 後編


むかしなぁ、石巻の長禅寺に栄存法印ちゅうお坊さんが住んでいたんだと。昔は仙台の新寺にいたんだども名僧の評判が高くてな、笹町家によってわざわざ呼ばれたんだと。栄存は石巻の発展につとめてなぁ、北上河口工事でもなんどもなんども雨がふるたびに河が氾濫してなぁ、そのたびに泥や砂が堆積ってその処理におわれるもんだからちっとも工事がすまなかったんだと。それを聞いた栄存が一心不乱に祈祷しつづけっとな、にわかに空が暗くなりあたり一面に大雨が振り出してなぁ、今まで積み重なった泥や砂が押し出されていったんだと。それからというもの工事は順調に進んだもんだから、いままで以上に栄存法印は地元のもんに慕われるようになったんだと。

んだども笹町家の代が変わって孫の笹町新左衛門頼重の代さなっと頼重は栄存の名声をねたんでなぁ、特に栄存の姪である楓ちゅうなんとも美しい娘さんがいてなぁ、頼重が妾に使用ともしたんだども楓自身だけでなく栄存もそれを拒んだんだと。頼重は役人と結託したり町のもんを脅したりしてなぁ、栄存の罪状をでっちあげて連判で訴えたんだと。罪状にゃあ栄存の見に覚えのないことばかり書いていてなぁ、特に戒律を守っている栄存にとって姪の楓と通じていたとまでいわれてなぁ、いくら栄存が訴えても頼重は役人を抱きこんでいたもんでなぁ、とうとう島流しされることになったんだと。町のもんは誰もが頼重のたくらみだっちゅうことはわかっていたんだども、それを口にできるもんがいなくてなぁ、ただ一人高橋太治右衛門が最後まで栄存法印の無実を訴え続けたんだと。それを聞いた栄存は太治右衛門さお札を与えたんだと。

さて、栄存が江ノ島さ流されるとなぁ、そこでも病人を祈祷したりして治すもんだから島のもんの信頼をえたんだと。栄存は時々、岩の上さすわり石巻の方向さ印をむすんでいたんだと。ふしぎとそのたび石巻さ大火が起こったんだと。んだどもお札が貼ってある高橋家だけは何度火事が起こっても焼けるおちることはなかったんだと。

そんな栄存にも死期が訪れてなぁ、
「わしが死んだ後は鰹節を口にはさめ石巻さ向かい逆に埋めてほしい」
って言い残して死んでしまったんだと。
島のもんはいくらなんでも栄存法印を逆さに埋めるのはむごいように思えてなぁ、結局普通に埋めたんだと。そしたら江ノ島さ疫病が流行りだしてなぁ、島のもんが次々と倒れていったんだと。これは栄存法印のたたりさちがいねぇってことになってなぁ、栄存の遺言どおりに逆さに埋めたんだと。そしたら疫病はうそのようになくなったんだと。

栄存法印が亡くなってからというもの、頼重が発狂してなぁ、
「おのれ栄存め」
って何もないところさ刀を振り回すようになって、息子やら奥方をばさーっ、と切り殺してしまったんだと。それからというもの頼重の発狂はおさまらなくてなぁ、ついにそのまま狂死してしまったんだとさ。
それから五十年後に松巌寺の住職さんが藩さ訴えて栄存法印の罪を赦してなぁ、栄存神社として今でも祀っているんだと。



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【2006/06/22 19:36】 | 民話(宮城県仙台市以外) | トラックバック(0) | コメント(0) |
第八十七話 なっちゃみ屋敷
なっちゃみ屋敷


むかしなぁ、亘理の長健寺ちゅうところにでっけえ樅の木がはえていたんだと。そこを夜とおろうとするとなぁ、なんとも悲しげな声で
「おぶさってー、おぶさってー」
ってこの世のもんとはいえねえ不気味なうなり声が聞こえてなぁ、夜になると誰も樅の木の前を通ろうとはしなかったんだと。

ある日のこと、そんなら俺が正体見届けてやろうって肝っ玉のふてえ男がいてなぁ、夜になっと酒の力を借りて長健寺の樅の木さ向かったんだと。だんだん樅の木に近づくとなぁ、
「おぶさってー、おぶさってー」
って不気味なうなり声が聞こえたんだと。男は
「そんなにおぶさってーなら俺の背中さおぶされ」
って大声を出したんだと。そしたら背中さどさっと、なんかがおぶさってきたんだと。それはそれは重かったんだども男は正体を見届けようとおぶさったまま家さ戻ったんだと。家さ帰って明かりをつけてみっとなぁ、おぶさったもんは大きな袋でなぁ中を開けてみっと、中さまぶしいぐらいに輝く金がぎっしりつまっていたんだと。

男は一夜にして金持ちになってなぁ、豪勢な屋敷をたてたんだと。その屋敷をまわりのもんはなっちゃみ屋敷って呼んだんだと。「なっちゃみ」っちゅうのは「泣きやみ」って意味なんでなぁ。
そうそう、男におぶさってからというもの樅の木のうなり声はぴたっとやんだんだとさ。


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【2006/06/18 19:29】 | 民話(宮城県仙台市以外) | トラックバック(0) | コメント(0) |
第八十六話 狐とり弥左衛門その3
狐とり弥左衛門その3


むかしなぁ、鯰江六太夫っちゅう笛の名人がいたんだと。六太夫は仙台藩に伝わる鬼一管っちゅうそのむかし鬼一ちゅう笛の名人が吹いていた笛を預かるほどそれはそれは笛の名人だったんだと。
んだども六太夫はある事件のとばっちりをうけてなぁ、鯵島ちゅうところさ島流しになってしまったんだと。六太夫は笛を懐さしのばせて鯵島で一人寂しくくらしていたんだと。

六太夫は毎日夕方さなると浜さでては一人笛を吹いていたんだと。そしたらいつのころからかひょっこりわらしっこがやってきてなぁ、まいにちまいにち六太夫の笛を聞いていたんだと。

そんなある日のこと、いつものように六太夫が笛を吹き始めようとするとな、わらしっこは涙をながしてなぁ
「六太夫さまの笛を聴くことができるのも今宵までです。私はこの島に住む狐でございます。明日になるとこの島に弥左衛門という狐とりの名人が領主の獲物である狐をとった罪でこの島に流されてきます。」
っていうんだと。六太夫は
「前もってやってくるのがわかるんなら逃げることもできっぺ」
っていうんだども、わらしっこは
「いや、弥左衛門の前では私の神通力も失せてしまいます。今宵はお礼に源平合戦をお見せいたしましょう」
っていうとなぁ、弥左衛門の周りはたちまち海になり多くの舟が目の前に現れてなぁ、矢が飛び交い掛け声がこだましたんだと。そして合戦が終わると元の浜にもどったんだと。そしたらわらしっこは最後に
「これこれこの日にこの浜で笛を吹きなさい。いいことがありますよ」
っていうとどこかへ行ってしまったんだと。

次の日、鯵島さ狐とり名人の弥左衛門がやってきてなぁ、さっそくこの島さ古狐がいることを聞くと罠を仕掛けたんだと。狐は七度罠をかいくぐったんだども八回目でついに捕らえられてしまったんだと。狐はでっけえ白狐でなぁ、弥左衛門でもなかなかお目にかかることがねぇぐらいの大物だったんだと。
六太夫は不憫に思ったんだどもわらしっこに化けていた狐に教わったとおり、いわれた時間に浜さでて笛を吹いたんだと。
ちょうどその時に藩主様が遠く海を隔てた磯へやってきていたんだと。そしたらどこからともなく笛の音が聞こえてきてなぁ、あまりにもいい音色だったもんで家来に探させたんだと。そしたら遠く三千里もの海を隔てた鯵島から吹いているってことがわかりびっくりしてなぁ、こんな笛の名人を島流しにしたことを後悔してただちに呼び戻したんだと。


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【2006/06/16 19:25】 | 民話(宮城県仙台市以外) | トラックバック(0) | コメント(0) |
第八十五話 狐とり弥左衛門その2
狐とり弥左衛門その2


むかしなぁ、仙台の川内ちゅうところに勝又弥左衛門っちゅうお侍さんがおったんだと。弥左衛門は狐とりの名人でなぁ、たくさんの狐を退治したんだと。前にも話したけんども古狐から、時には明神様のお告げを伝えに来た白狐まで命を落としてしまうほどでなぁ、誰からともなく「狐とり弥左衛門」ってよばれるようになったんだと。

弥左衛門は鼠を油で揚げて、狐がよだれたらしそうな秘密のにおいを漬けるんだと。それに米糠を炒ったものと一緒に袋さ入れてなぁ、狐がいそうな山ん中さぶんぶん振り回しながら入っていくんだと。そうすっと炒った糠が落ちてなぁ、そのにおいにひきつけられて狐は糠の跡をたどって弥左衛門の屋敷さ入ってまんまと罠にかかってしまうんだと。
んだから「勝又弥左衛門」ちゅう札を家さ貼ったり、懐さ入れておけば狐はよりつきもしねえから化かされる心配がなかったんだと。

んでいつのころじゃったかのぅ。東街道のわきさある藪さ一匹の狐が住みついてなぁ、道をゆくい人をだましたり、農家の大事な作物を食い散らかしたりとそりゃあすき放題やっていたもんで村のもんは困ってしまってたんだと。
あいにく弥左衛門は父親の喪にふくしていたんだども、藩からのじきじきの命がくだったもんだからさっそく鼠を油で揚げて捕まえる準備をしていたんだと。

そこさ、世話になってる坊さんが尋ねてきてなぁ
「そなたは藩の命令で悪狐を退治するらしいが、父上の七々日もすぎないうちに殺生をおこなうとはなにごとだ。なき父上の後生を願わくばやめなされ」
と忠告してなぁ、弥左衛門は普段から世話になっているもんだから承知したんだと。
そしてお昼も近かったもんだから坊さんに飯やら酒を振舞ったんだと。んだども坊さんはいつもに比べてよく食うわ、よく飲むわでなんだか様子がおかしかったんだと。弥左衛門はこっそり席をはずすと門の外さ油鼠と罠を仕掛けて何食わぬ顔していたんだと。

坊さんを見送りだして部屋さ戻ると庭のほうからぎゃーーーと悲鳴があがったもんでなぁ、いってみっと坊さんが罠さかかって狐の正体を現していたんだと。

やっぱ弥左衛門にゃあかなわねえなぁ。


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【2006/06/15 19:20】 | 民話(宮城県仙台市以外) | トラックバック(0) | コメント(0) |
第八十四話 狐とり弥左衛門その1
狐とり弥左衛門


むかしなぁ、仙台の北五十人町に勝又弥左衛門っちゅう足軽が住んでいたんだと。
弥左衛門は狐がにおいかぎつけっと、ふらふらっと引き寄せられるもんでなぁ、その丸薬の中さ毒いれて狐を次々と捕まえていたんだと。
これには仙台の狐ちゅう狐が慌てふためいてなぁ、どうにかして弥左衛門に狐とりやめさせなきゃなんねぇってことになってな、狐たちが集まって知恵をしぼったんだと。

ある日のこと、弥左衛門のおっかあが妹の嫁入り先さいったんだと。その晩、弥左衛門が寝ようとすっとどんどんどんどん戸をたたく音がしてなぁ、何だべって戸をあけっとおっかあがいてなぁ、中さ入るなり
「おめえの狐とりのことを考えっと落ち着いて泊まっことができねぇ。無益な殺生なんかしねえでけろ。」
っていうんだと。弥左衛門は
「わかったわかった、もう狐とりはやめっから安心して寝てけろ」
っておっかあを布団中さ寝かせたんだと。そしてこっそりと丸薬を枕元においてなぁ。
次の朝起きてみっとそこにはなんともでっけえ古狐がくたばっていたんだと。

またある日のこと、弥左衛門が青葉城の裏林さ見回りしてっと前のほうから狩りからの帰りな伊達重村公が行列引き連れてやってきたんだと。弥左衛門はあわてて土下座したんだと。そしたら重村公は弥左衛門の前さ立ち
「そなたが弥左衛門か。そちがわしの獲物を先にとるとは言語道断である。今後は狐をとってはならぬぞ」
って言うんだと。弥左衛門はただただ平伏するばかりだったんだども、こっそりと重村公の懐さ丸薬をいれたんだと。
次の日の朝、弥左衛門が裏林さいってみっと、そこには前よりもでっけえ古狐がぶっ倒れていたんだとさ。

やっぱ弥左衛門にゃあかなわねえなぁ。



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【2006/06/13 19:14】 | 民話(宮城県仙台市以外) | トラックバック(0) | コメント(0) |
第八十話 ひるめし
ひるめし


むかしなぁ、野々島っちゅうところに内海っていう長者どんがすんでいたんだと。
内海長者は舟を何十隻ももっていてなぁ、色んな所さ舟出していたもんだから、たいそう銭っこをためていたんだと。

この長者どんはよくばりでなぁ、朝から晩まで使用人を働かせてたんだと。ちょっとでも休んだりすると持っている杖で、
「もっとはたらけ、もっとはたらけ」
っていいながら使用人を殴りつけていたんだと。
んだども長者どんは朝は遅く起きては酒を飲みそれから朝飯を食べていたんだと。

ある日のこと、長者どんはいつものように朝ゆっくり起きて酒を飲み始めてなぁ、
朝飯を食おうとしたんだと。下女が朝飯持ってくるとなぁ、長者どんは
「なに蛭ば持ってくるやつがあるか」
って怒鳴り散らしたんだと。んだどもだれが見ても朝飯なんだども長者どんは蛭だってきかねえんだと。
んだもんだから、長者どんは今度は朝も寝続けて昼から起きて飯を食うようになったんだと。んだどもある日から
「なに蛭もってくるやつがあるか」
って怒鳴り散らしてなぁ、ちゃんとした昼飯をもっていったのに長者丼は蛭だってきかねえんだと。
しかたねぇもんで夕方までねて夕飯から食うことにしたんだと。んだどもいつのころからか長者どんには夕飯も蛭に見えてしまってなぁ、倉の中さたくさんの米が入っているのに何も食うことができずに死んでしまったんだと

この野々島にはこんなはやりうたがあるんだと。

朝寝するこは無限の鐘よ
朝の飯(まんま)が蛭(昼)になる


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【2006/06/05 18:53】 | 民話(宮城県仙台市以外) | トラックバック(0) | コメント(0) |
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