雨月民話風呂
メールマガジン民話万象でご紹介いたしました民話の再編集や、時節に応じました民話の紹介を行っております。 また、時折雨月物語についてもふれていきたいと思います
第十六話 遠野物語その2 サムトの婆
サムトの婆


むかしあったずもな。たそがれの頃になると、よくむすめやこどもが神隠しにあったんだと。松崎村の寒戸に一人の娘がいたんだと。ある日のたそがれどきになぁ、梨の木で遊んでいた娘が突然いなくなったんだと。梨の木の下に草履を脱ぎ捨てたままでなぁ、村中のもんが何日もかけて探し回ったんだども結局見つかんなくてなぁ。

それから三十年ばかしたった頃になぁ、その家で親類や近所のもんが集まっていたんだと。そこになぁ、ぼろぼろの着物をきたなんともきたねぇばあさまがやってきてなぁ。そこにいるもんは、なんでこんなきたねぇばあさまがくるんだべぇ、って思ったんだと。
そうしたらそのばあさまがなぁ、

「あぁ、なつかしいべ」

って、周りにいたもんひとりひとりにいったんだと。よくよく聞いてみれば三十年前に行方不明になった娘だったんだと。

周りにいたもんは家んなかにはいれ、っていうんだども

「みなの顔みにきただけだぁ。おらぁ、すぐに帰んなきゃなんねぇ」

ってなぁ、どこへともなく消えていったんだと。ちょうどその日は強い風が吹いていてなぁ。こんな強い風が吹く日はサムトの婆がやってきそうな日だ、っていうんだと。

どんとはれ


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【2005/12/12 14:43】 | 民話(青森、宮城以外の東北) | トラックバック(0) | コメント(0) |
第十五話 遠野物語その1語り部さんのおはなし ざくろ千粒
ざくろ千粒


ざくろを食べたことあんべ?ざくろの中にいくつ粒があるかわかるべか。じつはなぁ、ざくろには千粒もの粒があると決まっているんだと。そんなに細かく数えられても保証はしないけどなぁ。

むかしあったけんど、ある村で毎日一人ずつ鬼にこどもがさらわれていたんだと。さらわれたこどもは鬼が育てている千匹の鬼に細かく切って食わせてそだてていたんだと。毎日こどもが一人ずついなくなるもんだから村人はたいそう困ってなぁ。
それをみていたお釈迦様がどうにかすんべと思ってなぁ。鬼が村に行ってこどもをさらいに行っている間になぁ、鬼の子供を一匹隠したんだと。

そんなことなどしらねぇでなぁ、鬼はさらったこどもをさっそくきざんで食べさせようとしたんだと。んだけども、なんど数えても鬼のこどもは九百九十九匹しかいなかったんだと。鬼はなぁ、狂ったようにこどもを捜したんだと。

「おらの、かわいいやろんこはどこだあー」

そうしたら目の前にお釈迦様が現れてなぁ、

「おまえが探しているこどもはここにいるぞ」

といって隠していた鬼のこどもを目の前にだしたんだと。

「あぁ、おらのかわいいやろんこ」

といって鬼は喜んだんだと。それをみたお釈迦様はなぁ

「これ、鬼よ。自分のこどもは千匹もいるのに一匹いなくなっただけでそれほど騒ぐならば、人間のこどもをさらわれたら、その親の気持ちはわかるべなぁ」

「わかった、これからは人間のこどもをさらうのはやめる。んだども、鬼の子供は人間のこどもじゃなけりゃあそだたねぇ。どうすればいいんだべ」

っていううんだと。そうしたらお釈迦様はなぁ

「それならばこのざくろを食べるといいべ。中に千粒の身があってなぁ、皮は人の皮の味、実は人の肉の味がするんでなぁ」

ていうもんだから鬼は喜んで、それからというものこども千匹を立派に育てたんだと。
それを見たお釈迦様は感心してなぁ。「鬼」なのに「子」を「母」として立派に育てるもんだから「神」にしたんだと。それが今でも子育ての神として奉られている「鬼子母神」なんだなぁ。

んだからなぁ、こどもを育てる事のできねぇ親はなぁ、鬼にも劣るんだと。普通だったら鬼にも劣るなんていうんだども、鬼でさえも千匹のこどもを立派に育てるから鬼にも劣るってなもんで「人でなし」っていわれるようになったんだと。

どんとはれ


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【2005/12/10 14:46】 | 民話(青森、宮城以外の東北) | トラックバック(0) | コメント(0) |
第十五話 遠野物語その1語り部さんのおはなし 卯子酉様
卯子酉様


むかしあったけんど。あるところにおっとうとおっかあとこどもと三人で暮らしていただと。
ある日、おっとうとおっかあが野良仕事しているときになぁ、こどもはその横で遊んでいたんだと。そうしたら、空から大きな影がこどもを横切ってなぁ。なんだべぇ、と思って空を見てみるとそれはそれは大きなわしだったんだと。んだども、おっとうもおっかあも野良仕事に夢中でなぁ、わしに気がつかなかったんだと。

そうしたらわしはこどもをつかんで飛び去ってしまったんだと。それに気がついたおっとうとおっかあは慌ててわしを追いかけたんだと。野を越えて、山を越えて、んだけどもとうとう追いつけなくなってなぁ、次の日になって村人総出で探したんだども見つけることができなくてなぁ。まわりはあきらめるしかねぇべなぁ、というんだどもおっとうとおっかあはあきらめることなく探しつづけたんだと。

それから何年たったことだろうか。ある日のこと、川に変わった生き物が杭に引っかかっているという話でなぁ。村のもんらが川に集まっていたんだと。おっとうもおっかあもなぁ、何か思うところがあったんだべなぁ。二人も川に行ってみたんだと。そうしたら、杭にはなんともいえない不気味な生き物でなぁ。顔は人のもんだけども下半身が魚でなぁ、なんともせつなそうな顔をしていたんだと。

おっとうとおっかあは前のほうに出て顔を確認したんだと。そうしたら、どことなくさらわれたこどもに似ていたんだと。おっとうとおっかあはさらわれたこどもに違いねぇと思ってなぁ。たとえ、不気味な姿であっても親としたら子供がかわいいもんだ、よく戻ってきたなぁ。
っと、思っているとその不気味な生き物は安心したのかそのまま死んでしまったんだと。
そこで、おっとうとおっかあはなきがらを引き取ろうとしたんだと。村人はそんなもん引きとるのはやめとけ、というんだども二人はせっかくのかわいい我が子が戻ってきたんだって丁寧に葬ったんだと。

その葬った場所が今の卯子酉様でなぁ。親子の縁がいつのまにか男女の縁結びになったんだなぁ。

どんとはれ




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【2005/12/09 14:40】 | 民話(青森、宮城以外の東北) | トラックバック(0) | コメント(0) |
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