美女峠
むかしなぁ、岐阜県の久々野町と朝日村の境の峠にな、それはそれは美しい尼さんが住んでいたんだと。尼さんは峠で茶屋を開いていてなぁ、それはそれは峠越えの旅人の疲れを癒していたんだと。んだども不思議なことに尼さんは何年たっても美しいままで年とったようにはみえねぇんだと。 ある日のこと、わけあって尼さんが村を離れることになったんだと。そん時に見送りに出向いた村人たちに 「今までお世話になりましたお礼に、もしも日照りが続くようなことがありましたらこの山で雨乞いをなさってください。必ず雨を降らせましょう」 っていうと峠をあとにしたんだと。 村のもんは美しい尼さんをしのんで「美女峠」と誰からともなく呼ぶようになったんだと。この美しい尼さんは実は八百比丘尼でな、村で日照りの時に雨乞いすると必ず雨が降ったんだと まんが日本昔ばなしの本をお探しの方はこちら ![]() |
白米城
むかしなぁ、今から600年くらい昔のことの話なんだと。松坂市に住む北畠満雅ちゅうおさむらいさんがなぁ、足利のおさむらいさんと戦っていたんだと。足利のおさむらいさんは五万もの大軍をひきつれていたもんでなぁ、北畠のおさむらいさ んは城ん中でたてこもることにしたんだと。城ん中さ逃げられてはどうにもなんねぇからな、足利のおさむらいさんは城の周りの水という水を城ん中さいかねぇようにしたんだと。 これに困ったのは北畠のおさむらいさん。水がないのでは外に出なきゃなんねぇども、外さ出たら五万もの大軍がいるからどうにもなんねくてなぁ、いったいどうしたものかと考えていたんだと。そしたらあるものが 「この城に白米はたくさんあるから白米を使ってだまそうではないか」 ってなぁ。わざわざ足利軍が見えるところさ馬を引き連れて、馬の背中に白米をかけていっぱい水があるように見せかけたんだと。 遠目からみっと、いかにも水で馬を洗っているように見えるもんでな、足利のおさむらいさんはこれじゃあいつまでたっても城から出てこねぇって考えて軍を引き上げることにしたんだと。 この城の本当の名は阿坂城っていうんだども、白米で敵の目を欺いたから白米城っていうんだとさ。 まんが日本昔ばなしの本をお探しの方はこちら ![]() |
雪女(長野県信濃町)」
むかしなぁ、雪が降り続く朝におじいさんが山さある炭焼き小屋か歩いてったんだと。炭焼き小屋は山の上のほうさあるもんでなぁ、深く積もった雪ん中をざっくざっくざっくざっく、雪をかきわけて登っていったんだと。 あと少しで炭焼き小屋さつくっちゅうところでなぁ、なんだか目の前にこんもりした雪の塊があったんだと。よくよく見てみっとそれは白いえりまきまいた女がうずくまっていたんだと。なじょしたべぇ、っておじいさんが声をかけっとなぁ、 「にわかに腹が痛くなり動けないのであります」 っていったんだと。そしたらおじいさんは自分の懐からなんかあった時のための薬を出してなぁ、まわりに水がねぇもんだから雪を口に含ませて飲ませたんだと。そうしておじいさんは女の人につきっきりで看病してやっとなぁ、だんだん女の人の顔色もくるしそうでなくなったんだと。 「どうすんだ。おらの炭焼き小屋はここをもう少し登ったとこさあるんだがそこさいってやすまねぇか」 っていうんだと。 「いいえ、ここにもう少ししましたらつれがきます。なんとお礼をいってよいのやら」 っておじいさんを見送ったんだと。 炭焼き小屋ではだいたい半月の間こもりっきりになるんだと。おじいさんが炭焼き小屋でせいをだしているとなぁ、ある吹雪の晩のこと、風の音に混じってどんどんって戸をたたく音がするんだと。こんな晩にだれだべなぁ、って戸を開けてみっとなぁ、そこにはだれもいなくかわりにたくさんの草もちが置いてあったんだと。 おじいさんはなんで草もちが置いてあんのか考えたんだと。そしたら前に助けた女を思い出してなぁ、 「あぁ、あん時助けたのは雪女か。雪女なら雪さ足跡をつけなくても草もちを置くことができるべなぁ」 って草もちを神棚さ備えて、炭焼きの仕事を終えて家さ戻って婆っあんと一緒に食べたんだと。 まんが日本昔ばなしの本をお探しの方はこちら ![]() |
蛸薬師(京都)
むかしなぁ、京都のある寺に善光という修行中のおぼうさんがいたんだと。善光は毎日修行に励んでいたんだども、一つ気がかりな事があってなぁ。善光のおっかあが病弱でなぁ、修行の身とはいえ日々心配していたんだと。んなもんだから善光は寺におっかあをよんでなぁ、そばで面倒を見ることにしていたんだと。修行をしながらおっかあの面倒を見るのは大変だったんだども善光はまいにちまいにち修行とおっかあの看病をしていたんだと。 んだどもいっこうにおっかあの病気はよくなんなくてなぁ、心配した善光が何か自分にできることはないか聞いたんだと。そうしたらおっかあが 「おらぁ、好物のたこがくいてえ」 っていったんだと。これには善光は大弱りでなぁ。お寺なもんだからなまぐさものを持ち込むわけにはいかなくてなぁ、善光は考えに考えたんだと。んだどもおっかあのたっての願いなもんだからと、箱を持って市場にいってたこを買ったんだと。坊さんがたこを買うなんてまずありえねえもんだから皆怪しがったんだと。 善光が寺に入ろうとするとな、和尚さんが善光の持つ箱をみてなぁ 「その箱の中身見せてみろ」 っていうんだと。これには善光は困ってしまってな、中にたこが入っていることがわかってしまったらただじゃすまねもんでなぁ 「薬師如来様、このたこはおっかあの病気がよくなるために買ってきたたこです。この難をどうかお助けください」 って祈りながら箱を開けたんだと。そうしたら箱の中には八本の足ならぬ八巻の教本が入っていたもんだからなぁ、とがめらんねえでと寺の中にはいったんだと。そうしたら教本が飛び跳ねてなぁ、寺の池にざぶーん、と落ちたかと思うと中から光を放ちながら薬師如来様があらわれてなぁ、その光を浴びたおっかあはたちどころに病気が治ったんだと。 それからというもの、このお薬師様を「蛸薬師」とよぶようになったんだとさ。 まんが日本昔ばなしの本をお探しの方はこちら ![]() |
西行戻り橋
天岩戸を知っているかのう。昔、アマテラスオオミカミが天岩戸にお隠れになられたときにタジカラノミコトが岩戸を開けたんだと。その時にあまりにも強い力で開けたもんだからその岩戸が信州の戸隠まで飛んでしまってな、そこに社を作ったんだと。 西行はその社がどうしても見たくなってな、信州にいったんだと。 そうして、最魚が険しい山道を登りやっとのことで数々の社を見て回ったんだと。あと、奥社だけというところで桜の下で遊んでいるわらしたちを見かけたんだと。わらしたちが木登りをして遊んでいるもんだから西行は 『猿稚児と 見るより早く 木に登る』 といったんだと。そうしたらあるわらしが 『犬のようなる 法師来たれば』 と下の句を続けたんだんだと。 それを聞いた西行はすっかり感心してしまいな、奥院へ行くのを忘れて山を下りてしまったんだと。その時西行が見た桜を「西行桜」というようになったんだってな。 その後に、西行は近くにある別所温泉に行こうとしたんだと。あとは橋を渡って村さ入るだけという時にな、わらしたちが籠の中さいっぱいの蕨(わらび)を入れていたんだと。それを見た西行は 「これ、わらび(藁火)をたくさんとってきて、手を焼くんじゃないぞ」 って、からかったんだと。そうしたらわらしたちはなぁ、 「おぼうさん、檜笠(火の木笠)かぶって頭にやけどつくっていらぁ」 っと返したんだと。 西行は思わず頭に手をやって、自分の頭が燃えていねぇか確かめてしまったんだと。それをみたわらしたちはわらびをつかんでやけどしているまねをしながら橋を渡ったんだと。 「わらしでさえこんなにとんちがきくもんなら親はそうとうなもんだべ」 ってんで恥かかねえようにと温泉に行かなかったんだと。 それからというもの、この橋を西行戻りの橋と呼ぶようになったんだとさ。 まんが日本昔ばなしの本をお探しの方はこちら ![]() |
『御伽婢子』巻の七「飛加藤」
男は飛加藤(とびかとう)と呼ばれていました。きょうも広場で大勢の人を集め、さまざまな幻術を披露していました。飛加藤は一頭の牛を人々の前に引き出して、これから呑牛なる術をお見せしよう、と言い出したのです。彼は牛の頭に自分の口を近づけたと思うと、するすると牛を呑み込み始めました。こうして飛加藤、あっけに取られる人々の前で、牛をすべてを呑み込んでしまいました。 見守るもの全員が感嘆の声を上げたのですが、そのとき傍らの松の木に登っていた男が叫びました。 「牛を呑んでなどいない、上に乗っているだけだ」 人々がふと気が付くと、確かに、そこには最前の牛がいて、飛加藤は牛の上に乗っているだけでした。牛から降りた飛加藤は頭上の男を見て苦笑いし、今度は夕顔の種を地面に植えたのです。そして扇子を取り出、それで地をあおぐと、じょじょに芽が出、双葉が出、やがてみるみるうちにツルが伸び、松の木にからまってよじ登って行きました。これがいわゆる「植瓜植樹」の術す。 すると、こんどは大きな夕顔の花が開いたのです。飛加藤は刀を抜くが早いか、その見事な夕顔の花をちょんと断ち切ったのす。「ばさっ」地に落ちたのは花にはあらず、先ほど木の上に登っていた男の頭でした。 人々が「ああっ」と驚いたときには、牛を曳いた飛加藤の姿は夕闇の中に消えて行きました。 まんが日本昔ばなしの本をお探しの方はこちら ![]() |
むかしむかしあるところに…
むかしなぁ、江戸に色んなとこからお殿様が集まっていたんだと。お殿様たちがあれやこれや話していると、あるお殿様が胸を抱えて苦しみだしたんだと。周りにいた人たちはびっくりしてなぁ、すぐに医者を呼ぼうとしたんだと。 そのときに越中の国のお殿様がなぁ、懐から印籠を取り出して薬を飲ませたんだと。そしたら今まで苦しんでいたお殿様がけろっと、すっかり直ってしまったんだと。 この話を聞いた将軍様はなぁ 「そんなに良い薬なら日本全国に売ってまいれ」 て言ってなぁ。越中富山の薬売りは関所などの制限が免除されたんだと。 そんなある日のこと、ちかごろ関所破りが多くなっったもんで将軍様は困っていたんだと。 誰かが手引きをしているにちげぇねぇ、と思ってなぁ。多くなったのが薬売りが関所を免除になってからなもんだから、将軍様は薬売りの一人を捕まえたんだと。そうしたら薬売りはなぁ、 「おら、なにも関所破りの手伝いなんかしてねぇ。たぶん、他の村の話をしてなぁ、○○村はごちそうがでた、とか■■村は金が取れたとか話すからかなぁ」 って言ったんだと。 将軍様は薬を売るのにしゃべんねぇわけにいかねぇもんだからどうにかなんねぇものか、と考えてなぁ。 「それならば、村の名前なんぞいわねぇで[むかしむかしある所に]と話せ」 て、言うもんだからそれからというもの富山の薬売りは「むかしむかし、あるところに」って言いながら色んな話をするようになったんだと。 まんが日本昔ばなしの本をお探しの方はこちら ![]() |


